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2018年12月 8日 (土)

海洋プラスチック汚染とは?パートⅡ―②

続き:
3-2 社会への影響
 海洋環境下のプラスチックが増えるにつれ、人間への潜在的な影響も増大する。
● 健康と食品の安全性
  食物連鎖の下から上までのあらゆる段階で、野生生物はプラスチックを摂取している。我々が食べる魚介類も例外ではない。しかし、海洋プラスチックとその添加物が食べ物を通してどのように人間の健康に影響を与えるかについてはまだわからないことが多く、現在多くの研究が進められている。
 国連食糧農業機関(FAO) は2017年に「マイクロプラスチックの栄養移行は魚介類における蓄積にはつながらず、生物濃縮性で有害な難分解性化学物質や添加物が人間の食事摂取全体に及ぼす影響はごくわずかである」と結論づけた(もっとも、食物中のマイクロプラスチックに関する知識はまだ十分ではないことを認め、さらなる研究が必要であるとも強調している)。
 それに対して、結論を出すには、さらに研究とデータが必要だが、多くの研究者が「プラスチックの栄養移行はすでに起こっている」と主張している。2015年、ロックマン(カリフォルニア大学)らは、インドネシアと米国での調査の結果、「調べた魚類・甲殻類のうち、50%以上に人為起源のプラスチック破片の証拠が見出された」としている。
 ベルギーのゲント大学の研究によれば、海産物(特に牡蠣のような貝類)を大量に消費するヨーロッパ人は、一人当たり毎年11,000個ものマイクロプラスチックを摂取している可能性がある。
 他方、牡蠣などの貝類からの摂取は、日常的に住居内の合成繊維がはがれ落ちたものを食事中に摂取している量に比べたら大したことはない、という研究者もいる。
 実際には、最も基本的な食べ物からもマイクロプラスチックを摂取しているリスクがある。ハチミツ、砂糖、ビール、食塩の中にもマイクロプラスチック粒子が見出されている。
 我々が飲んでいる水の中に存在しているかを調べた最近の研究では、水道水では159サンプルのうち81%に、ペットボトルの水では世界の上位ブランドの11社から集めた250サンプル中93%にマイクロプラスチックが見つかった。これらのマイクロプラスチック粒子の大半は、我々の衣類などに使われている合成繊維から来ていると考えられている。
 しかし、プラスチックやその添加物が人間の健康に及ぼす悪影響への懸念は、食事を通しての摂取にとどまらない。ビスフェノールAやフタル酸エステルといった可塑剤やプラスチックへの化学添加物に慢性的に触れていることの悪影響に警鐘を鳴らす研究者もいる。
 こういった物質は、我々が日常的に触れているプラスチック製品に広範に使われている。たとえば、缶詰食品の容器、哺乳瓶、水のボトルなどだ。
 ある研究では、これらの合成化学物質は米国市民の90%以上の血中に存在しており、人体や野生生物の健康への様々な悪影響と相関していた。がんのリスクの増大、精子の質の低下、肥満などの内分泌・代謝障害、注意欠陥多動性障害(ADHD)などの神経行動障害などだ。
 研究者が特に懸念しているのは、こういった化学添加物が野性生物(ワニや魚を含む)および人間の内分泌系に大きな影響を与えているのではないかということだ。男性(オス)の性的な発育に永久的な損傷を与える可能性がある。さらに研究から、このような内分泌攪乱化学物質にされされた魚は、生殖に対する悪影響を子孫にも伝えることがわかっている。しかし、その影響の全容はいまだわかっていない。
● ケガや死の危険
  国連環境計画 (UNEP) の2016年の報告によると、水泳・潜水中にプラごみが身体にからまることで、ケガや死の危険すらあるという。また、2005年の米国の沿岸警備隊の報告によると、水面下の物質との接触によって、269件の船に事故が起こり、15人が死亡、116人が負傷している。プロペラのシャフトと右舷のプロペラに捨てられた漁業用ロープがからまってフェリーが転覆し、292人が死亡するという最悪の事態も起こっている。





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