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2018年12月14日 (金)

海洋プラスチック汚染とは?パートⅡ―⑧

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※ ②パッチワークをやめ、本質的なビジョンと包括的な枠組みを
   日本のこれまでの対策は、容器包装リサイクル法などによる個別対応である。2018年、マイクロプラスチックに言及する初めての法律が成立したものの、「海岸漂着物処理推進法」の改正という形での対応だ。容器包装に限らず、我々の日常生活や産業活動の隅々に行きわたっているプラスチックそのものを経済や社会の中で如何、位置づけるか、という本質的な考えやフレームづくりが求められているのだ。
   何が本質的かを判断するひとつのフレームが、前にも述べた「5R」なのだ。国や自治体、企業や産業界の取り組みが、この5Rのどこに対応しているのか、より本質的・根本的な取り組みに向かっているのかをチェックする必要がある。
   地球温暖化が、省エネを推進するだけでなく、化石燃料そのものの位置づけを変えてきているように、小手先の施策ではなく、プラスチックそのものの文明における位置づけを考え直し、「あるべき姿」からの野心的なビジョンが必要だ。
※ ③イノベーションの源泉として位置づける
   ヨーロッパでのプラスチック対策の盛り上がりの背景は、人間の健康への影響の懸念が広がったこと、サーキュラー・エコノミーへのシフトに於ける各国の主導権争いやルールセッティングを通して、国際競争力の源泉となってきたことがある。
   日本にとってこれはチャンスでもあるが、手をこまねいていては大きなリスクとなる。プラスチック問題を日本企業のイノベーションと国際競争力につなげるビジョンの取り組みとして推進する必要がある。
   実際、世界の企業はそのように動いている。例えば、世界最大の消費材メーカーの米プロクター・アンド・ギャンブル (P&G) は世界で初めて、海洋廃棄プラスチックを25%原料化したシャンプーの再生ボトルを開発している。再生ボトルの生産のために、毎年、2600トンの海洋から回収したプラスチックを活用するプランであるという。
   生分解性プラスチックの技術開発も進められている。特に、現行の技術での生分解性プラスチックは海洋環境では分解しにくいとされているが、海中でも分解する生分解性プラスチックの研究開発が進んでいる。このような先端技術を要するものこそ、日本の頑張りどころだ。
   マイクロプラスチックの分野では、化粧品などのマイクロビーズを使わない方向への動きは見られるが、今後は、もう一つの「汚染の多排出源」である合成繊維への視線が厳しくなっていくと思われる。洗濯してもマイクロプラスチックが流れ出ない合成繊維や衣類を求める声が大きくなっていくだろう。ここにも不作為のリスクとともに、大きなビジネスチャンスがあるはずだ。
※ ④企業に対する取り組みと情報開示要求が強まる可能性
   温暖化の分野では、カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト (CDP) などを中心とする情報開示運動が、石炭などの化石燃料を使い続ける企業からの投資引き揚げ(ダイベストメント)を後押し、この数年、世界の企業の温暖化対策は見違えるほど進んできた。
   CDP は、元来は、その名のとおり、「温暖化」が対象だったが、今ではそれ以外に「水」「森林」を対象とするプログラムもできている。海洋プラスチック汚染の悪影響が明らかになる中で、そう遠くない将来、CDPかそれに類する団体が「海洋プラスチック汚染に関する情報開示」を企業に求め始め、その開示情報を用いてての「プラスチック・ダイベストメント」も始まる可能性がある。
   実際、2018年9月には、脱炭素のダイベストメント運動の先頭に立つノルウェー政府年金基金の運用を担う部門が世界中の投資先となる企業の取締役会に対し、プラスチックごみの汚染対策など海の環境保全の取り組み強化と、関連情報の開示を求める新たな方針を決定したと伝えられている。
   こういう動きが本格化した時に、現在「脱炭素宣言」「再エネ100%宣言」をした企業が市場で評価されるように、海洋プラスチック汚染をゼロ化すると宣言して取り組んだり、汚染を回収・処理できる技術を持つ企業がおおきな注目を集めるようになるだろう。
   国としても企業としても、国際競争力の新たな舞台が海洋プラスチック汚染の分野に登場しつつあるようだ。日本の政府や企業は手を打つことができるだろうか。





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