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2019年1月 3日 (木)

遺体科学の挑戦(2)―①

「人間と科学」第295回より、遠藤 秀紀(東京大学総合研究博物館教授)さんの論文を記載する。 コピー・ペー :
 「今朝方、うちのゾウが絶命したのですが、死体を受けとることはできますか?」
 私(遠藤)の仕事はそんな電話で始まる。電話の主は動物園だ。飼育動物が死ぬことが事前に予見されることはむしろ少ないので、ほとんどの場合、死んでから突然連絡を受けることになる。
 もちろん動物の死はこちらの都合などまってはくれない。元旦のキリン、七草のシロサイ、お盆休みのバッファロー、クリスマスイブのキリンなどを、当然のように経験していく。
 死体は、365日24時間、いつでも待った無しだ。
 この仕事、まずは心のやりとりから入るものだ。長いものでは動物は30年40年50年と飼育する。飼い主のところに受けとりに行く私(遠藤)は、通夜や葬式に現われる、とりあえず余所者である。
 仕事のプロとしては、飼ってきた人々の気持ちを受け止め、彼らと悲しみをともにしなければならない。いわば家族親族としての所作振舞いができることが肝腎だ。
 「大学の教授が何か知らねえが、俺はこいつのことをあんたより知っている。あんたがまだランドセルしょってた頃、俺はもう、こいつの面倒を見ていた。俺は自分の嫁や息子よりこいつと過ごした時間が長いんだ」
 あるときは、腫れた瞳で絶命した巨体を前に、そう怒鳴りつける飼育課さんがいた。小一時間、そのまま話を聴く。最後に彼が口にしたのは、
 「もう死んだんだから、こいつに何もしてやることはできないんだ。教授先生、後は頼むよ」
 という一言だった。こうして私(遠藤)は死体を有り難くいただくのだ。
             ― ある日の動物園




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