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2019年1月22日 (火)

EUの事例から ⑤

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 ドイツでは2018年1月から「ネットワーク執行法」(NetzDG)が正式に施行された。この法律は、フェイスブックやツイッターなどのSNSにおいての投稿がヘイトスピーチ、名誉棄損、国民扇動に相当して、違法とされる場合には、24時間以内に消去することを義務付ける。また、すぐには判断できない場合、法務省が7日間以内に審査し、違法と判断されても消去されない場合は、最大5000万ユーロ(65億円)の罰金が科される。
 ネットワーク執行法では、利用者が、まずどういう理由で特定の書き込みが違反していると判断したかをSNSサイトを運営するプラットホーム会社に報告する。もしSNS運営者が24時間以内に対応しない場合、法務省が介入することも出来る。
 ドイツのIPアドレスがあれば外国からの投稿に対しても苦情を申し出ることが出来る。
 ネットワーク執行法は前司法大臣、ハイコ・マース(現、外務大臣)の肝いりで導入。背景には、難民危機が頂点に達した2015年秋以降ドイツでのヘイトクライムが増え、2016年は右翼に扇動された犯罪が増加していることがある。
 マース外務大臣はその著書、『目を背けず、立ち上がれ――右傾化に対する戦略』で、「インターネットは法律の届かない空間があってはならない」とし、民主主義を破壊しようする動きに対して、「中立ではいられない」という。
 戦後ドイツには、ナチスのシンボルを公共の場で示したり、ナチス風の敬礼をしたりすることなどを禁じた。国民扇動罪という厳しい罪状が刑法に定められている。民主主義の理念にまっこうから敵対する勢力とはあくまでも戦い、民主主義を守らなければならないという考え方は、戦後ドイツの基本法(憲法)の姿勢と重なる。戦後ドイツの「戦う民主主義」の精神は、現職の世代の政治家にも引き継がれている。
 『シュピーゲル』誌のインタビューで、マース外務大臣は、学生時代にアウシュビッツ強制収容所を訪れたことが政治家を志した原点であったと述べている。
 ドイツの難民保護政策は、ナチスの犯罪に対する反省の延長上にあるともいえるが、それが極右勢力の攻撃の材料にもなっているのだ。
 マース大臣は、「以前はより良い議論さえできれば勝てると思ったものだが、今はそれだけでは不十分だと思うようになった。感情が先行する場合、論理的に話し合おうとしても無理である」とも述べ、右翼的デマゴーク(嘘)や扇動を促すシュプレヒコールは議論さえもないがしろにしようとする、そういった勢力とは「最後の最後まで戦う」tぴう。
 AfD側は、ネットワーク執行法が「検閲法」であると批判しているが、実際、何が違法で何が違法でないのか、その区別はつけにくい。フェイスブックやツイッターなどのSNSを運営しているIT企業が罰金を恐れて、違法か否か判断しにくい場合、必要以上に書き込みを消去するのではないか、ともいわれているのだ。
 「批判は予想されていた。インターネットを規制する法律は特にネットコミュニティーで批判される。しかし、炎上や批判が怖いからといって何もしないわけにはいかない」とマース大臣は語る。
 ドイツの公共放送が2018年9月に行った世論調査(Politbarometer) によれば、調査に応じた市民の79%が、極右勢力の躍進によりドイツの民主主義が脅威にさらされていると感じる、と答えている。より右翼的な過激派との結びつきが指摘されている AfDを、捜査機関である連邦憲法擁護庁の監視下に置くべきである、という意見も強まっている。
 「はじめに言葉ありきで、何らかの行為が起こる。ヘイトクライムは犠牲者がいるわけで、犠牲者を守ることが法の役目である」とマース大臣は語る。他人を傷つける言葉は暴力にも発展する可能性があり、そこには右翼・左翼に関係なく、暴力の行使を煽るような書き込みには発言の自由は認められないという―姿勢だ。





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