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2019年2月 1日 (金)

Clinical 脳腫瘍が原因→非歯原性歯痛 ④

続き:
3. 三叉神経痛の病態遷移
 三叉神経痛は、三叉神経枝の支配領域に生じ、1秒~2分間持続する電撃用疼痛、発作性の痛みである。
 2013年に発表された国際頭痛分類第3版beta版 (ICHD-3β) では、典型的三叉神経痛は、発作性疼痛である「純粋発作性三叉神経痛」と、持続性疼痛+発作性疼痛である「持続性顔面痛を伴う典型的三叉神経痛」の2つの病態に分類している。
 両者の病態は、CPA における三叉神経根の血管による圧迫と明記されている。
 2018年に新規改定された国際頭痛分類第3版(以下ICHD3) では、発作性疼痛の三叉神経痛を「突発性三叉神経痛」と「典型的三叉神経痛」で分けている。
 これまで通り、三叉神経根の血管圧迫により生じた発作性疼痛を典型的三叉神経痛とする。三叉神経根への血管圧迫が明らかでない場合でも、典型的な三叉神経痛症状を呈する症例は存在するが、その場合は突発性三叉神経痛と診断することになる。
 「持続性顔面痛を伴う典型的三叉神経痛」などの持続痛を主徴とする病態は「有痛性三叉神経ニューロパチー」という用語に変更された。
   国際頭痛学会による三叉神経痛の病態遷移と用語変更
●国際頭痛分類第2版日本語版
◍ 典型的三叉神経痛(血管が三叉神経を圧迫)
◍ 症候性三叉神経痛(脳腫瘍などによる圧迫)
            ↓
●国際頭痛分類第3版 beta 版日本語版
① 典型的三叉神経痛、純粋発作性
② 持続性顔面痛を伴う典型的三叉神経痛
 
           ⇒     国際頭痛分類第3版日本語版
               ◍ 典型的三叉神経痛
               ◍ 症候性三叉神経痛
               ◍ 突発性三叉神経痛
③ 占拠性病変による有痛性三叉神経ニューロパチー
④ 多発性硬化症(MS)による有痛性三叉神経ニューロパチー
           ⇒     国際頭痛分類第3版日本語版
               その他の疾患による有痛性三叉神経ニューロパチー
               (占拠性病変・MS による)
4. 症候性(脳腫瘍による)三叉神経痛の病態遷移
 脳腫瘍が原因の三叉神経痛も、典型的三叉神経痛と同様の症状であることが多く、両者を鑑別することは困難である。ICHD-3βでは脳腫瘍による三叉神経様疼痛を「占拠性病変による有痛性三叉神経ニューロパチー」として取り扱っていたが、ICHD 3 では「症候性三叉神経痛」の用語に変更している。
 一方で三叉神経ニューロパチーの用語はそのまま残してある。この二つの病態は、腫瘍と血管の解剖学的病因ではなく、症状(発作性または持続性)で区別している。
 繰り返しになるが、三叉神経痛はあくまでも発作性疼痛を主徴とする病態で、ニューロパチーは持続痛を主徴とする病態となる。
 三叉神経痛の痛みの特徴を有していて、脳腫瘍が存在する場合は、二次性(症候性)三叉神経痛となり、持続性顔面痛を伴う発作痛(三叉神経様疼痛)が有る場合には、その他の疾患による有痛性三叉神経ニューロパチー(占拠性病変)となる。
5. 三叉神経ニューロパチー
 従来、三叉神経の傷害には、「三叉神経麻痺」という病名が用いられてきた。三叉神経の傷害後、痛み、しびれ、感覚閾値の上昇(鈍麻)、異常感覚(アロディニア、痛覚過敏、ジセステジア等)などの神経障害が生じる可能性があり、「三叉神経麻痺」という病名はこれらの病態を正しく反映しているとは言えない。
 2018年度より保険適用病名となった三叉神経ニューロパチーとは、三叉神経に何らかの原因で機能障害が生じ、感覚の異常をきたす病態の総称で、痛みの有無は問わない。原因となる病態には、外傷(抜歯・嚢胞摘出術・インプラント手術・歯内療法等の歯科治療を含む)、聴神経腫瘍・髄膜腫・類上皮腫等の三叉神経に障害をお起こしうる空間占拠性病変、帯状疱疹、骨髄炎等の三叉神経を傷害しうる感染症、三叉神経痛や多発性硬化症等の神経疾患、顎骨腫瘍や転移性腫瘍等が含まれる。
(1) 無痛性三叉神経ニューロパチー:
    下歯槽神経、舌神経を傷害させた直後には通常、感覚の鈍麻(触覚・痛覚鈍麻)などの感覚障害を生じる。陰性徴候である感覚鈍麻は無痛性三叉神経ニューロパチーとも言い換えられる。
(2) 有痛性三叉神経ニューロパチー:
    歯科治療後の感覚鈍麻は経時的にピリピリ、ジンジンとした痛み(末梢神経障害性疼痛)に移行することがある。末梢神経障害性疼痛は、自覚症状としての疼痛(自発痛、誘発痛のいずれか、または両方)を有する病態で、アロディニア、痛覚過敏、ジセステジア等の陽性徴候を有痛性三叉神経ニューロパチーとも言い換えられる。また脳腫瘍による持続性顔面痛を伴う三叉神経様疼痛、三叉神経痛の前駆症状である持続痛を主徴とする三叉神経様疼痛も同様に、有痛性三叉神経ニューロパチーとして取り扱う。





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