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2019年2月 4日 (月)

Clinical 非歯原性歯痛 パート3 ①

井川雅子(静岡市立清水病院口腔外科顔面痛外来非常勤歯科医師)さんの「非歯原性歯痛診療ガイドライン」に従って、研究文を載せる。コピー・ペー:
            要      約
 「非歯原性歯痛診療ガイドライン」に1.筋・筋膜性歯痛、2. 神経障害性歯痛、3. 神経血管性歯痛、4. 上顎洞性歯痛、5. 心臓性歯痛、6. 精神疾患または心理社会的要因による歯痛、7. 突発性歯痛、8. その他の様々な疾患により生じる歯痛について解説する。
1. 筋・筋膜性歯痛(筋性歯痛)
1) 筋・筋膜性歯痛とは?
 咀嚼筋が酷使されて疲労すると筋痛が起こる。「筋・筋膜性歯痛」は、患者がこの筋痛を「歯痛」と錯誤したものをいう。基本的には三叉神経領域の痛みだが、実際には上部頸神経も三叉神経脊髄路核に収束するため、肩こり(僧帽筋)からも「歯痛」が生じることがある。
 筋が疲労すると、筋中にトリガーポイント(TP)と言う圧痛点が発現。日本人の感覚で言うと→「つぼ」に相当。しかしながら、筋痛が悪化すると圧痛だけでなく、自発痛が生じることがある。問題になるのは、自発痛が、しばしばTP(痛みの発生源)から離れた部位に生じることである。これを関連痛といい、「疼痛発生源」と「疼痛感受部位(患者自身が痛いと感じる部位)」が異なるために、誤診の原因となりやすい。
 もっとも典型的なのは、咬筋に生じるTPで、下顎臼歯部に関連痛を生じさせるため、患者は「下顎臼歯部の痛み」と誤認する。他にも側頭筋や顎二腹筋の筋痛が「歯痛」と患者にとって誤認される場合があることが知られている。
2) 異所痛とは?
 前述のような、疼痛発生源と疼痛感受部位が異なる痛みを「異所痛」という。臨床ではしばしば経験するのは、主訴は上顎の歯痛であったが、原因は対合する下顎の歯髄炎であった、などというケースである。その他にも、歯痛で肩こりが生じることは多く、患者から「歯が痛いと肩がこりますか?(またはその反対)」と質問された歯科医は多いはずである。
 異所痛のメカニズムは、「収束と関連痛」という概念で説明されてきた。外部から入った痛み(侵害刺激)は、まず電気信号(インパルス)に変換されて一次ニューロンを伝わり、延髄/脊髄で二次ニューロンに乗り換えて脳の視床に、さらに三次・四次ニューロンを経て、最終的に大脳皮質や辺縁系に到達し、「痛みである」と知覚する。
 部位の錯誤が生じるのは、一次ニューロン~二次ニューロンに乗り換える延髄/脊髄部分だ。ちょうど鵜飼いの鵜と鵜匠のように、多数の一次ニューロンが二次ニューロンに収束するため、二次ニューロン以上では、一次ニューロンから入った異なる部位の刺激を区別できなくなり、「上下顎を間違える」という現象を引き起こす。
 同様に上部頸神経も、歯(三叉神経)のニューロンと収束するため、歯の痛みを肩こり(僧帽筋のいたみ)と誤認するという現象が生じる。
 筆者(井川)は患者に説明する時には「上下の歯(または歯と肩)の神経は、頸の中で一つになるので、脳が部位を間違えやすい」という言い方をしている。
3) 診断的麻酔
 それでは、本物の歯痛なのか、筋からくる「歯痛」なのかはどうやって診断したらよいだろうか。口腔顔面痛には「診断的麻酔」という概念がある。末梢のある部位に痛みの原因があるのであれば、そこに局所麻酔を行なえば痛みは消失するはずである、という考え方。
 歯ではなく、咀嚼筋が原因の「歯痛」であれば、歯に麻酔をしても痛みは消えないはずである。では、患者が「痛い」と言っている歯には浸潤麻酔を行なえばよいだろうか。ここがややこしいところで、患者は浸潤麻酔による鈍麻した感覚で、痛いのか痛くないのかが分からなくなってしまうことが多い。
 従って、正解な結果を得るためには、疼痛発生源である筋のTPに直接麻酔を行う(トリガーポイントへ注射)ほうが確実である。TPへの麻酔で、それまで感じていた自発痛が消失すれば、筋から生じた歯痛(筋・筋膜性歯痛)であると診断。
 治療は筋性顎関節症に準じて、筋のマッサージやストレッチなどの理学療法を中心に行う。




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