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2019年2月 5日 (火)

Clinical 非歯原性歯痛 パート3 ②

続き:
筋・筋膜性歯痛(菌性歯痛)の例:
症例1
  患 者:63歳 女性 (病悩期間 2週間)
  主 訴:半年前にセットした下顎左側第1・第2大臼歯インプラントの自発痛(VAS 30/100)
  インプラントや周囲組織には炎症所見は認められなかった。痛みは開口時や咀嚼後に悪化する。この患者はインプラント セットして良く噛めるようになったため、左側のみで咀嚼していた。触診で左咬筋に TP を認め、TPの圧迫によりインプラント部の痛みは増強した。
  また TP に浸潤麻酔を行うと、インプラント部の自発痛は消失した。理学療法で1週間後には痛みがなくなった。
2. 神経障害性歯痛
 神経障害性歯痛とは、神経障害性疼痛(ニューロンが傷害されて生じる痛み)によって起こる歯の痛みをいい、発作性と持続性に大別される。発作性神経障害性疼痛である「三叉神経痛」は歯痛と、「舌咽神経痛」は顎関節症と誤認しやすいが、2007年にこの本誌で解説。ここでは、持続性神経障害性疼痛について述べる。
 持続性神経障害性疼痛でよく知られているのは、インプラント埋入や抜歯などによる下顎神経の損傷で生じ、下口唇の感覚鈍麻やアロディニア(軽い接触で強い痛みが生じる現象)などを後遺するものである。しかしもう一つ、日常臨床でよく見かける割に歯科医の盲点となっているものに、帯状疱疹の経過中に生じる「帯状疱疹性歯痛」がある。
◇帯状疱疹性歯痛
 帯状疱疹は、子どもの頃に感染した水ぼうそうのウイルス(水痘・帯状疱疹ウイルス)が、宿主の感覚神経節に潜伏し、加齢や疲労で宿主の免疫力が低下した際に再活性化して起こる再帰感染である。
 三叉神経領域は好発部位で、とりわけ2枝(上顎)や3枝(下顎)に生じた場合に「歯痛」が主症状となりやすい。この場合の経過は急性で、患者が歯痛を訴え始めてから収束するまで、通常1週間程度。しかしこの間に患者が被るのは24時間、間断なく持続するキリキリした激痛であり、痛みにより不眠をきたすことも多い。
 患者には「歯痛」と感じられるので、この間は頻繁に歯科を受診する。痛みを訴えている歯には異常は認められず、通常冷水痛や打診痛も著明ではないが、痛みをコントロールしようとした歯科医によって抜髄が行なわれることが多い。またウイルスが刻々と末梢へ向かうためか、歯痛の部位が日ごとに近心に移動していく現象が見られることがある。
 帯状疱疹の最終段階、すなわちウイルスが末梢に到達すれば皮膚や粘膜に水疱がでてくる。一方で、皮膚症状を欠く「無疹性帯状疱疹」もある。この場合はウイルスが途中で進行を止め、末梢に到達しないため、臨床症状は「痛み」のみとなり、歯痛との鑑別は一層困難となる。
 皮膚の帯状疱疹も同じだが、臨床現場では、診断は痛みの特徴を手がかりに病初期に行い、見切り発車で抗ウイルス薬を開始する必要がある。
     <帯状疱疹性 歯痛 の臨床経過>
 (1) ある特定の歯に突然疼痛が発現し、数日間で著明に増悪する。
 (2) ピーク時には睡眠障害をきたすほどの激痛となる。
 (3) 歯痛発現から疼痛が収束するまでは、約7~10日間の経過である。
 (4) 最終的に、該当歯近傍の口腔粘膜に水疱・びらん・潰瘍を形成するものが多い。
 (5) 帯状疱疹後神経痛を後遺することがある。
症例2
  患 者:37歳、 女性(病悩期間 1週間)
  主 訴:間断なく持続する下顎右側第1大臼歯・第2大臼歯の自発痛
 1週間前に下顎右側第2大臼歯の強い自発痛で受診したが異常が無いため経過観察とした。その後痛みは不眠をきたすほど増悪し2日後に再受診した。第2大臼歯の抜髄を行ったが痛みは改善せず、5日目に第1大臼歯も抜髄。その後も改善なく、7日目に当科を受診した。舌に水疱が自壊したびらんが観察されたことと、CF抗体価の上昇(64倍)おり、帯状疱疹による歯痛と診断した。




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