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2019年2月 3日 (日)

Clinical 脳腫瘍が原因→非歯原性歯痛 ⑥

続き:
3) 12脳神経スクリーニング
 口腔顔面痛専門医師は、三叉神経痛、三叉神経ニューロパチーおよび頭痛を伴う痛みを主訴として来院した患者に対し、12脳神経スクリーニングを行うことがある。ここでは一般歯科医院で行える簡易的脳神経スクリーニング(三叉神経、顔面神経、内耳神経、舌咽神経、迷走神経、舌下神経)について説明する。
(1) 三叉神経:前述した定性検査を行う
  綿棒による刷掃検査で、ピリピリとした疼痛が誘発されるアロディニアであるが1秒~2分続く発作痛かを鑑別診断する必要がある。後者の症状は典型的三叉神経痛の脳神経所見があり、その場合はトリガーゾーンへキシロカインスプレーを噴霧する。診断的局所麻酔診で発作痛が消失した場合には三叉神経痛と鑑別診断できる。
(2) 顔面神経:表情筋の運動を検査する
  顔のしわ寄せ、閉眼、口角挙上を指示し、左右を比較する。
(3) 内耳神経:聴覚の検査を行う
  左右の耳の横で手指の摩擦音が聞こえるか患者に尋ねる。
(4) 舌咽神経・迷走神経:咽頭部の運動を検査する
  口を大きく開けて「アー」と発音させ、軟口蓋の挙上、口蓋の変位の有無を観察する。
(5) 舌下神経:舌運動を検査する
  安静時に舌の萎縮の有無を観察し、舌の前方突出を指示し偏位の有無や筋力を観察する。
 脳腫瘍により頭蓋内脳神経は圧迫され、内耳神経障害、めまい、聴覚障害、歩行困難、複視、三叉神経痛など脳神経症状が生じることがある。しかしながら、腫瘍の初発症状は歯痛のことがあり、この症例4例中、3例は口腔内の症状が初発症状であった。
 脳腫瘍による三叉神経様疼痛では、弱い痛みから強い痛み、持続痛から発作痛など様々な非定型な症状に変化する。
 これらの症状に併せて眼症状、舌運動障害、味覚変化、顔面の動きの変化、聴覚の変化が生じることもある。このような症例ではデンタルX線写真、歯科用CTよりも痛みの特徴(病態生理)聴取や脳神経スクリーニングを行うほうが重要になる。
 本稿で提示した症例の4つのように、腫瘍による歯痛を伴った患者は歯科医院を初めに受診することがあるため、歯科医師は CPA (= 小脳橋角部:cerebello-pontine angle) 腫瘍による歯痛(非歯原性歯痛)の知識と鑑別診断力が必要となる。
 
● 定性検査(pin prick、綿棒による刷掃試験)と感覚異常の種類と用語の説明
<感覚の鈍麻>
◍ 触覚鈍麻 Hypoesthesia
  刺激に対する感受性の低下。綿棒で触られている感じが対象部位に比べて鈍い。
◍ 痛覚鈍麻 Hypoalgesia
  通常痛みを感じる刺激によって誘発される反応が、通常よりも弱い。 pin prick の刺激が鈍く感じる。
<異常感覚>
◍ 痛覚過敏 Hyperalgesia
  通常痛みを感じる刺激によって誘発される反応が、通常よりも強い。 pin prick の刺激が過剰に強く感じる。
◍ アロディニア Allodynia
  通常では痛みを引き起こさない刺激によって生じる痛み。綿棒の刷掃で痛みを感じる。 SW テスターの刺激が痛い。
◍ ジセステジア Dysesthesia
  自発性または誘発性に生じる不快な異常感覚。ビリビリ、ピリピリとした、あるいは虫が這うような不快な感覚。
◍ パレステジア 錯感覚 Paresthesia
  自発性または誘発性に生じる異常感覚、錯感覚。異常感覚であっても、必ずしも不快な感覚でない。触られた時などに、通常感じるのとは異なる感覚。ピリッと電気が走るような違和感。
 本稿は英文 (J Endod, No43, 2017/05/02 発行) に掲載されている内容に加筆したものである。本論文は Case Reports/Clinical Techniques 部門で Journal of Endodontics Awards に選出され、筆者ら(野間昇、林誠)は米国コロラド州デンバーで2018/04/25、に行われた米国歯内療法学会 AAE18 受賞式に参加した。
 




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