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2019年2月 7日 (木)

Clinical 非歯原性歯痛 パート3 ④

続き:
4. 上顎洞性歯痛
 上顎洞に起因する歯痛で、急性上顎洞炎の経過中に起こる歯痛が典型的である。上顎洞の炎症が近傍の歯に波及して痛みが生じると考えられる。
 本疾患が原因の歯痛は、患側の上顎小臼歯~大臼歯(通常第2小臼歯か第1大臼歯)にかけての1~2歯に発現する自発痛として感じられ、著明な打診痛を伴う。通常冷温水痛は認められない。冬に多く、問診すると多くの場合「風邪を引いている」、歯痛と同側の「鼻が詰まっている」ことが聞き取れるため、ここが鑑別の手掛かりとなる。
 両側の上顎洞前壁(中顔面)を親指の腹で指圧すると、患側に疼痛を訴える。
 鑑定診断はX線写真やCT、MRI  で行い、治療は抗菌薬に由る薬物療法が中心となる。いずれも耳鼻科に依頼するとよい。
症例3
  患 者 : 56歳、 女性 (病悩期間  1週間)
  主 訴 : 上顎右側第2小臼歯の持続性の歯痛
 X年1月13日より風邪を引いていた。17日より強い歯痛が発現し、歯科近医を受診するも、歯には異常なしといわれ経過観察となった。痛みは日ごとに増悪し、持続性で耐えがたくなった(VAS 70/100)ため、同年1月20日当科を受診した。上顎右側第2小臼歯/第1大臼歯に強い打診痛、また右側の著明な鼻閉を認めた。体温37.5℃。画像にて急性上顎洞炎と診断し、抗菌薬で消炎した。
5. 心臓性歯痛
 虚血性心疾患で歯痛が起こることはよく知られている。186名の虚血性心疾患患者を解析した2007年の Kreiner の有名な研究では、患者の38%は発作時には頭顔面部にも疼痛が生じ、6%は頭顔面部痛が唯一の症状であったと報告している。
 部位では喉の上部や下顎に多く86%が両側性の痛みである。最も重要な特徴は、「痛みは発作性に生じ、10分以内に消失する」ところである。
※ 心臓性歯痛の特徴
 ◍ 診断のポイントは痛みが発作性に生じること
 ◍ 部位 : (頭顔面部痛の場合は) 86%は両側性
 ◍ 特に運動との強い相関性が認められる。他にも寒さや興奮など同じ条件で「歯
   痛」が起こるときは注意が必要
 ◍ 性状 : 漠然とした鈍痛
 ◍ 強度 : 軽度~中等度
◆ 狭心症の場合
 ◍ 発作の持続時間は数分~10分以内
 ◍ ニトログリセリンの舌下投与で20~30秒以内に疼痛が消失
◆心筋梗塞の場合
 ◍ 歯痛は数時間にわたって生じる
 ◍ 緊急性がきわめて高いため、救急車で搬送。
 なお、虚血性心疾患による下顎の痛みを歯科疾患と誤診することをBuddenbrook syndrome という。これはトーマス・マンの小説「Buddenbrooks(ブッデンブローク家の人々)」 に由来。――主人公の1人、トーマスは歯の痛みを訴え、歯科で抜歯直後に死亡した。死因は心筋梗塞によるものと考えられている。
症例4
 患 者 : 61歳、 男性(病悩期間 6か月)
 主 訴 : 運動時の両側下顎臼歯部の痛みと胸痛
 X年3月末初診。前年の12月末に上記主訴がが初発。X年2月頃まで週2~3回、階段を上がったときと、通勤(歩行)時に突然両側下顎臼歯部にじわーというVAS 28/100 の痛みが2~3分生じ、その後痛みがみぞおちの5~7cm上のあたりに移動するという経験を繰り返した。一連の発作時間は10分以内であった。
 X年2月末には、VAS 100/100 の胸痛でうずくまりそうになったことがある(30秒ほど)。徐々に悪化するため、当科に受診した。循環器内科に依頼し精査を行った結果、労作性狭心症と診断、冠動脈ステント留置が行なわれた。 
 




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