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2019年2月12日 (火)

ゲノム編集した子の誕生報道 ②

続き:

● 人類社会の未来に関わる倫理問題

 ところが、香川によれば、この声明では以下の問題があることが述べられてもいた。

 (1) オフターゲットやモザイクといった技術上の問題(狙い以外の効果が出てしまう

   可能性)

 (2) 遺伝子改変の有害な結果を予測する難しさ

 (3) 個人のみならず将来の世代への影響を考える義務

 (4) 人間集団にいったん導入した改変を元に戻すのは難しいという事実

 (5) 恒久的エンハンスメントによる差別や強制

 (6) 人間の進化を意図的に変更することについての道徳的、倫理的検討

 この (3)~(6) は、人類の未来、人類社会の未来に関わる重大な倫理問題につながるものであって、これらの問題が解決したからゴーサインが出るというような簡単な問題ではない。

 前記の「報道発表概要」は、このような重大な倫理問題について知らぬふりをしたもののように見える。

 賀建奎氏による「ゲノム編集の子」出産報告は、この重大な倫理問題を露わにしてしまったと捉えることができる。このような受精卵(生殖細胞系列)へのゲノム編集と妊娠・出産という臨床応用は、(1) や (2) の問題をはらむという点で、危うい。

 つまり、十分に安全性に配慮していないという点で医の倫理に従っていない疑いがある。しかし、それだけではない。

 それにも増して重大なのは人類社会の未来に関わる倫理問題が無視されている。つまり、(3)~(6) の倫理問題への配慮が全くなされないままに一線を越えて臨床応用が行なわれてしまったということである。

● 日本医師会・日本医学会の共同声明

 では、ゲノム編集の子誕生の報を受けて出された日本の学術団体等の声明や新聞社説は問題をどのように受け止めているのだろうか。

 2018/11/30、にいち早く出された日本医師会・日本医学会の共同声明は、まずは「産まれてきた女児ら」に対する加害、あるいは人権軽視という点からの問題を掲げる。

 今回の行為は、産まれてきた女児らの身体的、精神的、社会的な安寧を踏み躙るもので

 あり、この考え方に照らすまでもなく、人の尊厳を無視し、声明を軽視するものであり、

 国際的な倫理規範から見ても常軌を逸したものであります。

 受精卵によるゲノム編集技術の安全性の確認が十分なされていない段階で行われたということの問題を強く前面に出している。種の改変というような結果につながりうるという倫理問題、つまり人類社会に広く長く影響が及ぶような倫理問題にも触れている。

 さらに、生殖細胞系のゲノム編集の影響は後の世代にまで影響が及ぶことから、人類という種に対する影響も極めて不透明であり、無責任極まりない行為であります。

 しかし、この側面への言及は短いものであり、すぐに「科学技術の進展は、疾病の予防や治療等に大きな貢献を果たすものと、多くの期待が寄せられることから」と研究推進のための制度づくりの必要性を説いている。

 倫理的に問題であるのは主に「産まれてきた女児ら」への倫理的配慮の欠如と捉えられているように感じられる。



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