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2019年2月14日 (木)

ゲノム編集した子の誕生報道 ④

続き:

● 重い倫理問題と法的規制に言及する新聞社説

 人類社会の未来に関わる重大な倫理問題が露わになったという認識は、新聞社説でも表明されている。2018/12/01、の『山陽新聞』の社説は、「人間は遺伝情報をどこまで操作して良いのか。その問いを改めて突き付けられた」と始められている。

 そして、「両親の望みに沿ったデザイナーベビーの誕生にもつながりかねないといった問題がある」とも、「賀氏による成功が偽りだったとしても、いつかは直面する課題には違いあるまい。これを機に、しっかりと対応策を練っておきたい」とも述べている。このような認識を踏まえて、法的規制、また国際規制にも言及している。

 日本は先日、生殖補助医療目的の基礎研究に限って容認し、人や動物の子宮に戻す

 ことを禁じる方針を打ち出した。欧州では法律で禁止している国は多いという。

 将来に禍根を残さぬためにも、各国のより効果的な対策が必要だろう。同時に、国際的

 なルールづくりの検討も含め、議論を深めるべきだ。

 この社説は、日本の総合科学技術イノベーション会議生命倫理専門調査会が、指針に沿って行うことを条件に、「生殖補助医療目的の基礎研究に限って」ではあるが生殖細胞系列へのゲノム編集を容認したことに触れている。これは、「「ヒト胚の取り扱いに関する基本的考え方」見直し等に係るタスク・フォース 報告書(第1次報告)」(2018年3月)で示されたもので、そこではすでに臨床応用が将来的にありうるかのような記述がなされている。

 この報告書について報道した『日本経済新聞』の記事(2018/03/09)は、「今後、同会議の決定を経て、文科省と厚労省が指針策定に乗り出す。指針はまず生殖補助医療に限って受精卵をゲノム編集で操作する基礎研究を認め、その後、難病や遺伝病、がんなどに範囲を広げる」としている。

 総合科学技術イノベーション会議生命倫理専門調査会は、徐々に範囲を広げて行き、やがては賀建奎氏が行なったような臨床応用に道を開くことを展望していたと見ることができる。

 日本政府やこの分野の研究者が望んでいるこうした展望を踏まえて、『山陽新聞』社説は、「欧州では法律で禁止している国は多い」ことを指摘し、「各国のより効果的な対策が必要だろう」と指摘しているのだ。

 類似の論調は、『京都新聞』2018/12/01の社説や、『愛媛新聞』2018/12/08の社説にも見られる。前者は、「今後、こうした事態が起きないよう各国は防止策を徹底してほしい。併せて、順守事項や容認要件といった国際的なルールづくりを検討すべきだ」としており、

 後者は「日本は、基礎研究に限って条件付きで容認する指針ができたばかりで法規制までは踏み込んでいない。ただ、今回の事態は罰則なしの自主規制では限界があることを示している。さらなる対策が欠かせない。国際的な動きに歩調を合わせながら、法規制の是非についても議論を積み重ねる必要がある」と論じている。

 できるだけ、法規制によってしばられたくない科学者や、その意向を尊ぶ政府や『朝日新聞』などの大手全国紙と、科学技術が倫理の枠を超えてしまうことを懸念するふつうの市民の意識を反映しようとする地方新聞や文系学会の考え方の対立が目立つようになっている。




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