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2019年2月11日 (月)

ゲノム編集した子の誕生報道 ①

島薗進(上智大学教授)さんの小論文「ゲノム編集した子の誕生と倫理問題」をコピー・ペー:

● ゲノム編集した子ども誕生の報道

 2018/11/08、香港で開かれた国際会議で、中国の研究者がゲノム編集技術で人間の受精卵の遺伝子を操作し、双子が生まれたと報告した。この研究者は子どもをHIV(エイズウイルス)に感染しにくい体質にするために、クリスパー・キャス9を用いたゲノム編集によって受精卵の遺伝子操作を行い、子宮に着床させたという。

 この報告についての報道を受けて、日本の多くの学術団体が声明を出し、また、社説を掲げた新聞もある。多くの学術団体が、このような問題について声明を出すことは滅多にない。それだけ大きな衝撃だったということである。

 もっとも、確かにゲノム編集を行った子どもが生まれたのかどうか確認できないので、そう主張されているというだけなのかもしれない。しかし、たとえそうだとしても、ゲノム編集を施した子どもが容易に生まれる状況になっていることが広く知られることになったのは確かだ。今後も続けて「ゲノム編集の子」が生まれていく可能性は十分にあるということである。

 南方科技大学の賀建奎副教授は、親の病気を引き継がずに健康な子供を産みたいという両親の切実な望みに応えてこれを行ったとしている。

 同副教授が報告を行った香港での国際会議は、2015年12月に米国ワシントン市で開かれた国際会議「ヒト遺伝子編集国際サミット」を引き継ぐ、第2回の「ヒト遺伝子編集国際サミット」である。では、この「ヒト遺伝子編集国際サミット」」とはどのような会議なのか。

● 第1回「ヒト遺伝子編集国際サミット」声明

 この会議はクリスパー・キャス9の開発者ジェニファー・ダウドナ、ノーベル賞受賞者である分子生物学者、デイヴィッド・ボルティモア、ポール・ハーバーグら18名が名を連ねて開催されたものだ。「国際サミット」と銘打たれているが、この分野の研究を推進してきたアメリカ、中国、イギリスの科学者が主体となっている。

 「国際サミット」というが、イギリス以外のヨーロッパの諸国から積極的に参加している科学者は少ない。この分野の研究を推進してきたアメリカ、中国、イギリスの三国の科学者が主導した会議であることに注意が必要である。

 この第1回「ヒト遺伝子編集国際サミット」の声明 (On Human Gene Editing:International Summit Statement) については、日本の科学技術振興機構 (JST) 研究開発戦略センター (CRDS) のホームページに「報道発表概要」が紹介されている。  

 そこでは、まず、(1) 「基礎研究及び前臨床研究」について、「徹底した基礎研究や前臨床研究が必要なことは明らか」なので、「適切な法的・倫理的規則や管理に従」いつつ推進すべきであるとしている。ただし、「研究過程で万一ヒトの初期の胚細胞や生殖細胞が遺伝子編集を受けた場合、改変された細胞は妊娠の成立に用いられてはならない」と付記されている。

 続いて、 (2) 「臨床使用:体細胞の場合」だが、これは有望なので、「不正確な遺伝子編集などのリスク」などを考慮しながらも推進しようとの姿勢だ。

  配偶子または胚の遺伝子組み換えをする目的で、遺伝子編集技術が原理的には使用

  される可能性がある。生殖は重要な細胞の遺伝子編集は重要な問題を多く含んで

  おり、次のような条件が整備されない状況下でその臨床利用を進めるのは無責任だ。

   ◍ リスク、潜在的利益、代替手段の適切な理解と均衡を図ることにより、関連の

     安全性及び有効性の問題が解決済みであること

   ◍ 提案されている応用の適切性について広範な社会的合意が存在すること

 これは社会的合意が得られればやるとの意思表示だ。倫理学者の香川知晶は、この「声明」は生殖細胞系列へのゲノム編集に歯止めをかける意志を示したものとは見なせないというが、もっともである。     「雑誌→世界 2月号より」



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