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2019年2月19日 (火)

Science 脱分化脂肪細胞の臨床応用化――取り組み ④

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7. 動物疾患モデルに於ける DFAT 細胞の移植効果
 DFAT に関してはこれまでに、様々な動物疾患モデルに対して数多くの移植効果が報告されている。例えば、脛骨欠損モデルのウサギへの DFAT/βリン酸三カルシウム(β-TCP)・Ⅰ型コラーゲン複合体移植では、移植4週間後には骨密度が上昇し、高い骨再生能を示すことが報告されている。
 また、顔面神経切除モデルのラットに対して DFAT/Ⅰ型コラーゲン複合体を移植して切断した神経の両端に設置すると、DFAT の一部は神経細胞に分化し、軸索の太い神経が再生されることが報告されている。
 加えて、外傷性脊髄損傷モデルマウスに対する DFAT の障害域注射によって運動機能が改善することや、皮膚全層欠損モデルラットにおける人工真皮移植後の皮膚再生促進効果、腹圧性尿失禁モデルに対する排尿機能の改善効果などがしめされている。
 さらに、MSCs と同様に免疫制御作用を示すことも明らかになっており、免疫性腎炎モデルラットに DFAT を静脈内投与をすると、腎炎が改善されることが報告されている。
8. 頬脂肪体 (BFP) に於ける成熟脂肪細胞の特徴と DFAT の有用性
 BFP は、上顎突起と下顎骨・頬骨の間に存在し、19世紀初頭にはじめて脂肪組織として知られるようになった。→<BFP とは>上顎突起と下顎骨・頬骨の間に有る脂肪の塊で、発達した毛細血管と弾力性線維に富む組織であるが、詳しい機能はよく分かっていない。
 BFP は乳幼児において発達しているから、吸啜運動を補助すると考えられており、成人になっても個体差や栄養状態に関係なく一定量存在する。成人の BFP 小葉間結合組織が発達しており、豊富な毛細血管と弾力性線維が有るため、咀嚼筋群と骨の間で緩衝作用を果たしていると考えられているが、詳細な機能はまだ分かっていない。
 また、感染・脱落等の合併症が少なく、良好な組織生着性を示すことから、口腔腫瘍の切除後に生じた上顎欠損部へ移植弁として再建に利用されている。
 筆者らは、日本大学歯学部付属歯科病院に来院した顎変形症患者3名から顎離断手術時に廃棄された BFP (平均8.8g)から成熟脂肪細胞の特性を調べた。BFP を酵素分散処理後、フラスコ上部に貯留した成熟脂肪細胞を粒度分布測定装置で測定したところ、直径40μm 未満の細胞が平均73%を占めることが明らかとなった。
 一般的には、成熟脂肪細胞の大きさは60~100μmと考えられているため、40μm未満の細胞分画 (S-adipocytes) と40~100μm の細胞分画 (L-adipocytes) に分けて蛍光染色を行なったところ、両群ともにすべて成熟脂肪細胞であった。
 さらに、BFP 由来の S-adipocytes と L-adipocytes から調製したDFAT  (S-DFAT、L-DFAT) の細胞数を計測すると、天井培養開始6,10、14日目における S-DFAT は、L-DFAT に比べて多いことから、S-adipocytes のほうが早く脱分化することが明らかとなった。また、調製した DFAT の特性を比較すると同様の遺伝子発現パターンを示し、コロニー形成能や細胞増殖能も同程度であった。
 また、これら2種類の DFAT を分化誘導培養した際に、脂肪細胞への分化能は同程度であったが、骨芽細胞誘導では S-DFAT のほうが多くカルシウム量が形成されることから、S-DFAT は高い骨芽細胞分化能を有する細胞集団であることが示唆された。
 さらに、BFP から DFAT を調製する際の酵素濃度を従来の1/5 で処理すると、2 倍以上の S-adipocytes を得ることができ、より多くの DFAT が調製可能であることも報告している (PCT/JP2015/068658) 。
 これらの結果から、BFP 由来の DFAT は口腔顎顔面領域の組織再生に有用性の高い細胞集団であることが推察される。





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