« Science 脱分化脂肪細胞の臨床応用化――取り組み ② | トップページ | Science 脱分化脂肪細胞の臨床応用化――取り組み ④ »

2019年2月18日 (月)

Science 脱分化脂肪細胞の臨床応用化――取り組み ③

続き:
5. DFAT細胞の優位性
 DFAT の治療用細胞としての優位性を記す。
  ① DFAT は成熟脂肪細胞分画から調製されるために、異種細胞の混入がなく、極めて均一な細胞集団を得ることができる。初代培養時に ASCs では約13%の単球、約3%の血管内皮細胞が混在した細胞集団であるのに対して、DFAT は異種細胞の混入率は0.1%以下であることが報告されている。
 ② DFAT は少量の脂肪組織から大量に調製することが可能なため、骨・軟骨等の再生に大量の細胞を必要とする症例などに高い有用性を示している。約1gの脂肪組織には4~6×10の6乗個の成熟細胞が存在、2週間程度で1~3×10の8乗個の DFAT を調製することが可能である。他方で、1g の脂肪組織中に含まれる ASCs は約5,000個程度であると報告されている。
 ③骨髄由来の MSCs や ASCs は採取される患者の年齢や基礎疾患によって細胞数や機能変化することが報告されているが、DFAT は年齢や基礎疾患に関係なく、新生児~高齢者迄→調製可能で、多分化能を示すことが確認されている。
 ④ DFAT はiPS 細胞と比較すると、未分化性が高くないために再生可能な組織は限定的であるものの、腫瘍化のリスクが低い、安全性が高い上に短時間で大量の細胞数を用意することができる。
 ⑤頬脂肪体 (BFP : buccal fat pad ) は歯科医師が局所麻酔下で比較的簡便に採取可能な脂肪組織であるため、DFAT は歯科口腔領域においても組織再生に有用な脂肪源であると考えられる。
6.  DFAT 細胞による歯周組織再生能の検討
 歯周病はう蝕と並ぶ歯科の二大疾患の一つであり、国民の約80%が歯周炎に罹患しているといわれている。
 歯周炎とはセメント質・歯肉・歯根膜・歯槽骨から構成される歯周組織の炎症性破壊を特徴とし、進行すると歯の喪失につながる。
 破壊された歯周組織の再生には、従来から人工骨移植や組織再生誘導法が行われているが、その適応や効果はいまだ限定的である。そのため、近年では MSCs と適切な足場材もしくは成長因子を組み合わせた再生医療が歯周組織再生の効果向上に有望視されている。
 筆者は、生体親和性と安全性に優れた乳酸ーグリコール酸共重合体 (PLGA) にラット皮下脂肪組織から調製した DFAT (1×10の6乗)を播種後、外科的に作製した歯周欠損領域に複合体他家移植することで歯周組織再生能を検討した。
 最初に、同系種ラットの左側下顎臼歯部にバーで歯周組織欠損領域(縦2mm×横3mm×深さ1mm)を作製し、欠損部に実験群として DFAT/PLGA 複合体を、対照群として PLGA を移植した。
 次に、CT 上で、移植後の再生過程を観察し、得られたデータから硬組織再生量を定量した。
 その結果、移植5週後には、実験群は対照群よりも2.4倍程度高い硬組織再生量が認められた。
 さらに、移植5週後の下顎骨を組織学的に評価した結果、実験群では新生骨と新生セメント質様組織が認められ、その間隙に太い線維束のコラーゲン線維の埋入が認められた。
 さらに、蛍光標識させた DFAT を同様に移植した際には、DFAT は新生歯根膜中に最多確認されたほか、新生骨・セメント質内や血管様構造物内にも陽性反応が認められた。
 これらの結果は、 DFAT/PLGA 複合体が移植部位での組織再生を積極的に促進し、 DFAT が歯周組織再生に有用な細胞であることを示唆している (PCT/JP2014/064633)。





« Science 脱分化脂肪細胞の臨床応用化――取り組み ② | トップページ | Science 脱分化脂肪細胞の臨床応用化――取り組み ④ »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: Science 脱分化脂肪細胞の臨床応用化――取り組み ③:

« Science 脱分化脂肪細胞の臨床応用化――取り組み ② | トップページ | Science 脱分化脂肪細胞の臨床応用化――取り組み ④ »