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2019年3月 8日 (金)

通貨スワップ契約―(1)

続き:細野祐二さんの文章を載せる。→ コピー・ペー。
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 ゴーン元会長の特別背任容疑の原点は、個人資産管理会社が新生銀行と締結していた通貨スワップ契約にある。通貨スワップ契約とは、元来は、特定の外貨を直物で買う(売る)と同時に同額の外貨を先物で売る(買う)一対の外国為替契約のことをいうが、現在では、将来の外貨でのキャッシュフローを交換する取引として広く定義されている。
 この時代、外資系金融機関を中心に通貨スワップ契約を組み込んだ金融商品が数多く開発され、富裕層に対して積極的に販売されていた。この手の通貨スワップ内蔵型金融商品は、顧客から預かる一定の証拠金にレバレッジを効かして、その数倍の通貨スワップ契約を締結する形態となっている。
 2008年9月のリーマンショックにより、安全通貨とされる日本円への資金逃避が起き、ドル円レートは2008年9月の108円~2009年2月の89円一気に19円幅(17.6%)の円高となった。
 ゴーン元会長の通貨スワップ契約は約18億5000万円もの評価損を抱えることになったというのであるから、その想定元本は少なくとも105億円(=18億5000万円÷17.6%=105億円)以上でなければならない。
 この通貨スワップ契約に対してゴーン元会長が差し入れていた証拠金の額は不明ではあるが、ここで適正レバレッジを3倍と考えると、ゴーン元会長に求められる必要証拠金は35億円(=105億円÷3倍)になる。おそらくゴーン元会長はこの通貨スワップ契約に対していくばくかの証拠金を差し入れていたのであろうが、これがリーマンショックにより18億5000万円の評価損となったので追証が発生したのである。
(借方) デリバティブ債権 $ 97,222,222
(貸方) デリバティブ債務 ¥ 10,500,000,000
想定元本 105 億円÷契約時レート 108 円= 97,222,222 米ドル
 新生銀行はゴーン元会長に追加証拠金の拠出を求めたものの、ゴーン元会長はそれを拒否し、契約自体を日産に付け替えることにした。契約当事者が日産自動車ということであれば、証拠金不足があろうが、新生銀行に否やはない。こうして、本件通貨スワップ契約は18億5000万円の評価損のまま日産に付け替えられたが、
 その時の会計仕訳は上表になる。
 本件通貨スワップ契約の日産への付替えは2008年10月のこととされているが、その時の会計処理では、ここで発生していたとされる18億5000万円の評価損は認識されることはない。
 通貨スワップ契約の含み損が認識されるためには、日産自動車の決算期における会計処理を待たなくてはならない。日産自動車の2009年3月期末において本件通貨スワップが未決済になっていた場合に、デリバティブ値洗い(時価での再評価)による決算整理仕訳が必要。
 本件通貨スワップ契約は2009年1月にはゴーン元会長の資産管理会社に再移転されたという。ならば、日産自動車には、評価損を認識すべき2009年3月期末を迎えることなく通貨スワップ契約を再移転したのだから、その受入から再移転までの全ての期間において、18億5000万円の評価損を認識しておらず、認識するすべもなかった。
 ゴーン元会長は、本件通貨スワップ契約の付け替えにつき、「日産に実損はない」と抗弁しているとのことであるが、事実は、実損がなかったどころか、形式上も実質上も日産には損失が認識できなかったのである。
(借方) デリバティブ債権  ¥8,652,777,758
       デリバティブ評価損 ¥1,847,222.242
(貸方)  デリバティブ債務  $97,222,222
ドル債権 $97,222,222×直物レート@ 89 円=円債権¥8,652,777,758
その時点の決算整理仕訳は上表で認識しなければならない。





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