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2019年3月13日 (水)

遺体科学の挑戦(4)―②

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 さて、東京大学総合研究博物館でドンタオの剥製標本の展示中である。ドンタオ(Dong Tao)という名で呼ばれる歴とした家禽のニワトリである。→ 足が太くて、ユーモラスな外貌だ。つまり、太い脚部には一体何が起きてしまったのかと、万人が不思議がる。
 ドンタオはベトナム北部で伝統的に飼われてきた品種だ。この奇妙な姿の主は、当地で少なくとも300年くらいは飼い続けられてきたらしい。何より特徴は、足首から先が極端に太くなる様だ。太いのはシルエットだけではなく、骨からして太い。形状を生み出した原因は解明されていないが、足の太くなる突然変異が生じ、それを好んだベトナム人がそういう雄雌を掛け合わせて、極端に足の太いドンタオを作出したに違いない。家禽・家畜とは、正に「人間が作り出す動物」なのである。
 ドンタオ→ 奇妙な外貌だが、人間が興味をもって育種しない限り、定着し広まるものではない。ニワトリは当然、食糧生産性の観点で注目されるはずであるが、ドンタオの場合は、おそらく肉や卵の生産性など度外視して、この足の太さが人々の興味を惹き付けたのだろう。確かに歩く様は普通のニワトリよりユーモラスに見え、ペット・愛玩という切り口からは大切にされる可能性がある。事実、古くは、ベトナム地域の王朝や権力者への貢物として活躍したらしい。
 遺体科学は、ただドンタオの死体を集めるだけではない。民俗学や文化人類学が関わりそうな現地調査を同時に進める。ドンタオの死体はもちろん標本にして残したいし、この太い足の構造を明らかにするのも自分の仕事だというプロフェッショナリティは沸き上がる。一方でこの場合、ベトナムの農村民からこのニワトリへ向けられてきた心持ちを同時に記録したいのである。
 




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