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2019年3月 2日 (土)

Clinical ブラキシズムとしての TCH ⑤

続き:
5. TCH による様々な影響
 TCH という概念は、顎関節症における寄与因子の一つとして提唱されたものであることから、顎関節や咀嚼筋(閉口筋)に過剰な負荷を生じさせる可能性がある。痛みを伴う顎関節症患者の51%は、日常生活において上下歯の接触頻度が多いことが示されている。また、筋痛患者は健常者に比べて覚醒時の非機能的な歯の接触頻度が約4倍多かったという報告もある。
 歯周病の増悪因子として以前から SB が注目されてきたが、最近の研究では TCH のような覚醒時の持続的負荷のほうが影響が大きい可能性があることが示されている。
 動物実験ではあるが、ラットの下肢圧迫による血流低下と圧迫除去後の再灌流により、痛みに関連する受容器の活性が促進され、下肢の痛み閾値が低下するという報告がある。
 これは正座によって生じる下肢のしびれ感や感覚過敏のメカニズムの一つとされている。たとえば、1kg 程度の持続的な荷重を顎堤粘膜に加えた場合、荷重時間が長くなるほど負荷除去後の粘膜部血流の回復が遅延するという報告がある。つまり、可撤性義歯をセットした状態で TCH のような行動があると、床下粘膜の持続的圧迫により顎堤粘膜の異常感覚や痛みを生じさせる可能性が考えられる。
 このような患者は痛みを訴えるものの、粘膜に傷などを見い出すことができない場合が多く、長時間義歯をセットしていると圧迫感や窮屈感が増加すると訴えることも多い。
 さらに、弱くて持続的なクレンチングにより歯髄感覚が過敏になる可能性や歯根膜感覚の変化が引き起こされる可能性も示唆されており、知覚過敏や咬合違和感の一因としても TCH の関与が示唆されるようになってきている。
                       ま と め
 「 TCH はクレンチングあるいはくいしばりと何が違うのか?」、あるいは「どのくらいの力から TCH というのか?」という質問を受けることがある。これについては、患者自身が”くいしばり”と認識している大きな力よりも小さい力で持続的に咬み続けていれば、それが TCH ということになる。
 従って、何kg以上の力であるとか、最大咬合力の何%以上であるなどという厳密な数字で区別できるものではない。そのため、TCH コントロールにおいて、合図があった場合の確認を、力の大きさとは無関係に「上下の歯が当たっているか否か」を基準に行わせているのである。
 エナメル質破折、歯根破折、あるいは補綴物の破損のように、硬組織に対するダメージは比較的短時間に大きな力が生じるような状況で発生する可能性が高い。このような大きな力は、睡眠時ブラキシズムのように生体の感覚が鈍くなっているような状況下で生じる可能性がある。
 一方、顎関節や咀嚼筋、歯周組織、義歯床下粘膜などは粘弾性体であることから、比較的大きな力に対しては短時間であれば耐えうる能力を持っている。しかし、長時間持続するような力に対しては、組織血流の低下などにより痛みや過敏化などの症状を引き起こす可能性がある。このような力が生じる状況は、まさにTCH に該当するといえる。
 顎口腔系の健康維持に於いて、細菌感染に対する対応としてインフェクションコントロールが重要視されているが、今後は、ブラキシズムのような力のコントロール、すなわちフォースコントロールにも注目すべきであろう。その際、SB やくいしばりだけではなく、TCH のような無自覚で持続的な力に対しても十分に目を向けていくことが重要になるといえる。





あるいはくいしばり

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