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2019年3月10日 (日)

ハリド・ジュファリ氏

続き:細野祐二さんの文章を載せる。コピー・ペー
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 ここにサウジアラビアの知人ハリド・ジュファリ氏が登場する。ハリド・ジュファリ氏は、サウジアラビアの財閥「ジュファリ・グループ」の創業家出身で、サウジアラビア有数の複合企業「E・A・ジュファリ・アンド・ブラザーズ」の副会長のほか、同国の中央銀行理事も務めている。ジュファリ氏が経営する会社は、2008年10月、アラブ首長国連邦に日産との合弁企業「日産ガルフ」を設立し、ジュファリ氏はその会長に就任している。「日産ガルフ」は、日産の中東市場の販売・マーケティング業務をサポートする目的で設立されている。
 ジュファリ氏は、新生銀行から追証を求められたゴーン元会長のため、自らの資金約30億円分を外資系銀行に預け入れ、その預金を裏付けとして約30億円分の銀行信用状を発行させた。この信用状はゴーン元会長を経由して新生銀行に差し入れられ、通貨スワップ契約は無事に日産からゴーン元会長の資産管理会社に再移転された。これが2009年1月のことである。
 その後、ジュファリ氏の個人口座には、2009年6月~2012年3月にかけて、「中東日産」の口座から、3~4億円ずつ全4回にわたり合計1470万ドル(約16億円)の金が販売促進費名目で振り込まれている。東京地検特捜部は、この金を、ジュファリ氏が行った信用保証の謝礼金だと言うのである。
 一般に、銀行が信用保証状を発行するには、保証額の数%を保証料を徴収する。本件の場合、この保証料はジュファリ氏が負担していたとされているが、その保証料なるものは、仮に保証料率を3%と想定しても、年額9000万円程度のもので、実際には保証期間は数ヵ月に過ぎない。しかも、結果的に、ジュファリ氏が外資系銀行に供託した30億円は手付かずで保全されている。ゴーン氏がジュファリ氏の負担した数千万円のために約16億円もの謝礼金を払うというのは、およそ経済合理性に反する。
 しかも、ジュファリ氏は、事実として、日産の中東市場の販売・マーケティング業務をサポートする目的で設立された「日産ガルフ」の会長であった。ゴーン元会長は、「知人への支払は、サウジアラビア政府や王族へのロビー活動あるいは現地販売店と日産との間で生じていた深刻なトラブルの解決の協力など、日産のための仕事をしてもらっていた」と抗弁するが、その抗弁は客観的事実に裏付けられている。これをもって特別背任などと主張するのはおよそ馬鹿げており、ゴーン元会長の特別背任容疑における第二の犯罪事実は成立しない。
 ここで第一の犯罪事実の証拠構造を冷静に分析すると、ゴーン元会長の特別背任容疑には、元秘書室長の提供する内部情報とその証言以外にろくな証拠などないことが分かる。元秘書室長は東京地検特捜部の頼みの綱ということになるが、ハリド・ジュファリ氏の証言が出れば、一発で撃沈するからである。
 本件特別背任の立件は、日産ゴーン事件における東京地検特捜部の失敗の本質でもある。なぜなら、ゴーン元会長がジュファリ氏に対する販売促進費の支払をもって特別背任とされる以上、ジュファリ氏はゴーン元会長の特別背任事件における共同正犯になってしまうからである。しかも、東京地検特捜部は、本件特別背任の立件に際して、ハリド・ジュファリ氏の事情聴取を行っていない。外国司法が適法手続きを経ることなくアラブの名族を犯罪共犯者に仕立て上げれば、イスラムの盟主サウジアラビアが黙っていない。
 東京地検特捜部は、ゴーン元会長の有価証券報告書虚偽記載罪での逮捕長期勾留により、フランス政府、ブラジル政府、レバノン政府を敵に回したが、今回の特別背任罪での立件によりサウジアラビア政府さえも敵に回すことになった。





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