« これからの薬学と歯学 ② | トップページ | Science 初期口腔がん早期診断には ~蛍光診断法の確立~ ① »

2019年3月17日 (日)

これからの薬学と歯学 ③

続き:
◎骨粗鬆症病態依存性薬物送達システムの創生
 薬物放出速度論の基礎的概念を自己硬化型アパタイト系セメントに適用し、種々の幾何学的構造特性を持つ人工骨の分子物理化学的性質と薬物放出特性を理論的に解明してきたが、これらの開発過程において、in vitro での抗炎症薬インドメタシン溶出とラットを用いた in vivo 溶出を比較する時、短期間では、きわめて高い相関性を有するが、1週間以上の放出実験では、in vitro 溶出が in vivo 溶出に比較して有意に高い傾向を確認された。
 健康なラットの血清カルシウム濃度が高く、通常のリン酸緩衝液中の実験は、カルシウムが含まれないため、骨粗鬆症に近い状況である。このことから生体骨親和性と生分解性を併せ持つアパタイトセメントからの薬物放出は、環境因子であるカルシウム濃度依存性がある― と考えた。
 抗骨粗鬆症薬含有アパタイトセメント DDS からの in vitro 試験に於いて、薬物放出速度は、Ca 濃度の高い疑似体液(SBF)では、表面にハイドロキシアパタイト様血漿が析出し薬物放出が抑制された。
 一方、Ca を含まないリン酸緩衝液ではセメント表面でアパタイトの溶解・崩壊が発生し、セメント空隙が増加することにより薬物放出を加速する現象を確認した。さらに、これらの病態依存性薬物放出制御システムの実証試験として、骨粗鬆症ラットで実験を遂行した。
 病態ラットに於いて血中 Ca 濃度が低い時、in vivo エストラダイオール放出速度が有意に加速されたのに対して、正常ラットで血中 Ca 濃度が高い時、薬物放出速度は有意に抑制された。
 この骨粗鬆症モデルラットの実験から、アパタイト DDS の薬物放出は、骨粗鬆症病態に依存することが明らかとなった。病態が進行して血中 Ca が低下すると活性化された破骨細胞の分泌する酸によりアパタイトが溶解あるいは崩壊して、内部に含有している抗骨粗鬆症薬が多く放出される。
 その後、放出された骨粗鬆症薬により病態が改善され血中 Ca が増加すると、骨セメント表面に骨芽細胞が活性化し、新生骨が形成され、薬物放出が抑制されることが証明された。また、これらの抗骨粗鬆症薬の Ca 濃度応答性放出の治療効果として、骨粗鬆症後、本研究の HAP セメントは、コラーゲンとの複合化や遺伝子の送達や細胞スキャホールドとしての機能が確認され、骨形成を加速する複合化材料であることが証明された。
 わが国は、これまでに半導体や家電製品の複合化、自動車のエンジンとモーターの複合化による Hybrid 化により、基本的機能を相加的効果から相乗的効果を導き大きな成功を収めてきた。これらの繊細で緻密な技術の組み合わせは、わが国の得意とするところである。
 医療の分野においても、よりよい医療を発展させるためには、従来型の優良な医薬品や医療器具を別々に開発追及するだけでなく、多次元的思考に基づき、医療器具や医療器械を含めた革新的で Hybrid な機能を有する複合化医薬品の開発が必要である。このためにも医学・歯学・薬学・工学の連携・複合化は、将来の発展の必須条件といえるのではないかと考える今日この頃である。




« これからの薬学と歯学 ② | トップページ | Science 初期口腔がん早期診断には ~蛍光診断法の確立~ ① »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: これからの薬学と歯学 ③:

« これからの薬学と歯学 ② | トップページ | Science 初期口腔がん早期診断には ~蛍光診断法の確立~ ① »