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2019年3月 4日 (月)

SAR報酬

続き:細野祐二さんの文章を載せる。コピー・ペー。
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 ゴーン元会長逮捕後のマスコミ報道により、 ①本件捜査が日産側の内部通報に基づくものであったこと、 ②ゴーン元会長の逮捕に際しては日産側執行部らに司法取引が適用されていること、 ③日産側にはルノーとの日仏連合に関する内紛があったことが分かっている。これは東京地検特捜部による日産自動車の内紛に対する民事介入ではないか。
 特捜検察は、2010年9月の厚労省村木厚子元局長の無罪判決とその後の大阪地検特捜部の証拠改竄事件により、国民の信頼を失って久しい。その後雌伏八年威信回復を狙っていたところ、今回日産の内部通報と全面協力により、ゴーン元会長逮捕という起死回生の一打を放つことができた。
 本件カルロス・ゴーン事件で奇異なのは、ひとたびゴーン元会長に同情的な記事がマスコミに出ると、すかさず、ゴーン元会長の悪性を印象付ける日産自動車側内部情報が報道されることにある。
 特捜検察は事件の捜査情報を外部に漏らさないことになっているので、これらの内部情報は日産自動車内反ゴーン経営陣一派のリークによるものと考えるしかない。日産自動車側現執行部とすれば、特捜検察の虎の威を借りてやっとのことでカルロス・ゴーン元会長を追い出したというのに、いまさらゴーン元会長が無罪になったのでは目も当てられないということであろう。
 これらゴーン元会長の会社私物化内部情報のうち、役員報酬に関連するものは次の二点だ。
 ●日産自動車は、2003年6月の株式総会で、役員報酬としてストックアプリシエーション権(SAR)と呼ばれる株価連動型インセンティブ受領権の導入を決定し、ゴーン元会長は2011年3月期以降、合計40億円分の SAR を得ながら、その報酬額が有価証券報告書に記載されていない。
 ●ゴーン元会長はオランダの子会社から2017年まで年間1億円~1億5000万円程度の報酬を受け取っていたが、これが有価証券報告書にやはり、記載されていない。
 SAR は基準株価からの株価上昇に対してインセンティブを与える報酬制度であるのだ。類似の報酬制度にストック・オプションがあるが、ストック・オプションは、取締役に一定の権利行使価格で自社株を買取る権利を与える報酬制度のことをいう。
 ストック・オプション制度の下で株価が上昇した場合、取締役は(株価上昇前の)権利行使価格で自社株を買取り、これを市場で売却することにより、権利行使価格からの値上がり相当分を利益として受け取ることができる。
 オプション(選択権)なので、株価が下落した場合は権利行使をしなければいい。このように、SAR における報酬は会社から支払われるのに対して、ストック・オプションの報酬は資本市場がこれを支払う。
 ストック・オプションの場合は、会社は、一旦権利行使価格さえ決定しておけば、権利行使を行うかどうかは取締役の勝手で、オプション株の市場売却による利益確定について会社が介在する必要がない。これに対して、SAR の場合は、基準株価からの値上がり差額に基づく報酬額の決定と支払は会社が行わなくてはならない。
 すなわち、SAR は、基準株価の決定、報酬額の決定、報酬の支払という三段階において会社の決定が必要であり、このうちの一つが欠けても SAR は機能しない。
 そこで、ゴーン元会長に対する SAR を検討すると、日産自動車は、2003年6月の株主総会で SAR の導入を決定し、2011年3月期以降、合計40億円分の SAR を確定させながら、その報酬額は有価証券報告書に記載されていないという。ならば、ゴーン元会長は40億円分の SAR 報酬を貰っていないのである。なぜなら、40億円分の SAR 報酬は現金で支払われるので(貸方)、支払われたとすれば、複式簿記原理に基づき、必ず損益計算書に役員報酬として計上されている(借方)からである。
 ということは、日産自動車の SAR は、制度としては2003年に導入されたにもかかわらず、実際には報酬の支払が行われておらず、形骸化して機能していなかったということになる。
 形骸化して支払実績もない SAR 報酬の将来における支払の蓋然性はゼロに近い。本件 SAR もまた、有価証券報告書において開示すべき役員報酬に該当しない。
 次に、ゴーン元会長が年間1億円~1億5000万円程度を受け取っていたという報酬の支払会社は、アムステルダムの投資会社ジーア社のことである。日産自動車はジーア社に60億円を出資をしている。日産のオランダにおける連結子会社には資本金19億ユーロのニッサン・インターナショナルホールディングス BV 社があるが、ジーア社は日産自動車の連結対象子会社ではない。非連結子会社から得た役員報酬は内閣府令が定める連結役員報酬に該当しない。





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