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2019年4月28日 (日)

Topics 現代の歯科医院に必要な予防的視点~患者・スタッフトラブル予防のポイント~ ⑤

続き:

 

 

2. スタッフトラブル予防

 

1) 労働関係法規の特徴

 労働者(従業員・パート・アルバイトなど)は、労働基準法、労働契約法、最低賃金法、労働者災害補償保険法、男女雇用機会均等法、雇用保険法などさまざまな労働関係法規によって固く守られている。

 一方で、使用者(経営者)を保護する目的で作られている法律は存在しない。

 つまり、歯科医院も含めた日本の組織は、法律で保護されていない使用者が、法律で手厚く保護されている労働者と労働契約を締結して運用されている。

 実際、歯科医院が労働関係法規を知らずに(もしくは無視して)個人的な見解で行った判断・運用が違法であることも少なくない。それでも以前は問題が顕在化することは少なかったが、ネット社会の現代においては、極めてリスクの高い行為である。以前は余り労働者の権利について理解していなかったスタッフも、これからは、すべての権利の内容を理解しているという前提で、―――労働契約の整備は勿論の事、労働関係法規についての最低限の知識を把握し、適切な運用を行うことが極めて重要である。

 

2) 就業規則の重要性

 「就業規則」とは、労働者が就業する上で順守すべきルールや労働条件について定められた規則をいう。従業員が常時10名以上の医療機関には、就業規則を作成し届け出る義務があるが、従業員が常時10名未満の比較的小規模の医療機関には法律上、就業規則の届出義務はなく、就業規則を作成しなくても、法的には何の問題もない(労働基準法89条)。

 しかし、就業規則は労務管理において「組織を守る唯一のルール」である。法的義務のない小規模の医療機関であっても、ある意味、法的には弱い立場の使用者としては、就業規則の性質を理解し、自院にマッチした適切な就業規則を作成することが、スタッフトラブルの予防につながるものである。

 もちろん、就業規則には有給休暇や時間外手当などのスタッフトラブルの権利を記載するため、当然、スタッフを保護する内容も含まれる。しかし、これらの内容は、もともと労働関係法規に定められており、就業規則がなくても効果は変わらない。つまり、就業規則で規定したとしても、スタッフへのさらなる保護になるものではない。

 むしろ、就業規則には、スタッフが歯科医院内で守るべきルールを定めることができる。就業規則の存在によって、スタッフは事前にどのような行動をすると問題があるのかを認識することができるし、院長も就業規則という明確な基準によって、指導・注意が可能となる。

 就業規則が無ければ、感情的なトラブルが起こりやすく、実際に大きなトラブルに発展するケースもしばしば見受けられる。

 つまり、就業規則はスタッフの権利を明確にする面もあるが、それ以上に歯科医院という組織を保護し、職場環境の健全化を図るという意味合いが大きいのである。

 もちろん、労働基準法は最低労働条件を定める強行規定のため、労働基準法に反する内容は無効である(労働基準法13条}。しかし、労働関係法規の趣旨に反しない範囲で、自院の理念や考え方、医療人としての心構えを示すために、自院にマッチした就業規則を作成することはとても重要である。

 作成した就業規則は、スタッフに周知しなければ意味がないが(労働基準法106条、労働契約法7条)、院長からのメッセージを伝え、院長もスタッフも働きやすい職場環境を構築するためにも、むしろ、積極的に周知すべきである。

 また、一度作成した就業規則は、その規定のまま運用し続けなければならないわけではない。法改正があった際には、就業規則を法改正に合わせた内容に変更する必要がある。また、経営状態や職場環境の変化に応じて、就業規則をその都度見直すことによって、より健全な歯科医院経営につながる。なお、就業規則の変更が、スタッフにとって不利益な変更となる場合には、慎重に検討した上で、丁寧に進める必要がある。

 このように、スタッフトラブルを予防するためには、「就業規則」をはじめとする契約書面の整備が重要である。

 その上で、適切な運用も重要である。例えば、懲戒事由に該当しているスタッフがいたからといって、すぐに解雇が認められるかというと難しいケースがほとんどである。

 理由の一つとしては、懲戒事由に該当した行為を繰り返し行ったという具体的な事実を事後的に検証し得る記録が残っていないことが多いためである。従って、例えば、懲戒事由に該当する行為があった場合には、その行為に対する指導内容を記録し、場合よってはスタッフに顛末書を書かせるなど、しっかりと記録を残す運用が重要になってくるのである。

 

 

 医療トラブルを事前に予防する目的は、無用なストレスを回避させることによって、医院経営を安定化させ、よりよい医療を継続的に提供し続けるためである。

 歯科業界の発展および地位向上のためにも、身体の健康と同様、具合が悪くなってから、(トラブルになってから)対処するのではなく、今まで以上に「トラブル予防」という視点を持って、日々の診療にあたっていただければ筆者(小畑)は幸いである。――― と思っている。

 

 

 

 

 

 

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