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2019年4月 1日 (月)

Clinical 抗血栓療法と歯科外科処置のアップデート ③

   
 

続き:

2) DOAC 服用患者

 ワルファリンはビタミンK拮抗薬であり、ビタミンK含有の多い食物(納豆、クロレラ、青汁など)の影響を受け易いことや多くの薬物との相互作用あるため、PT-INR 値は変動しやすい。ワルファリンにみられる高頻度の出血性合併症や薬剤や食事などの影響を受けやすいという欠点を克服すべく開発されたのが DOAC (Direct Oral Anticoagulants)である。

 DOAC は、特定の凝固因子(トロンビンおよび活性型第ⅹ因子)を直接阻害する。DOAC は頭蓋内出血の副作用がワルファリンに比べて著しく少ない。

 現時点では、ワルファリンのPT-INR 値のような DOAC の抜歯時の出血リスクをモニタリングとして、第ⅹa因子阻害薬ではプロトロンビン時間(PT)、トロンビン阻害薬では活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)の有用性が示唆されているので、これらの凝固検査については知っておくべきである。

<凝固検査>(PT、APTT)について

  プロトロンビン時間(PT):基準値 10~13秒

   血管外(外因性)の組織中に存在する凝固因子の異常を検索。Ⅰ、Ⅱ、Ⅴ、Ⅶ、ⅹ因子欠乏で延長。

  活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT):基準値 20~40秒

   血管内(内因性)の組織中に存在する凝固因子の異常を検索。Ⅰ、Ⅱ、Ⅴ、Ⅷ、Ⅸ、ⅹ、ⅹⅠ、ⅹⅡ因子欠乏で延長。

 

  DOAC は、血中濃度のピークが約2時間前後と早いのですぐに効き、半減期が短いのですぐ効果がなくなるのが特徴である。そのため、抜歯時のDOAC 中断はワルファリンと同様に脳梗塞などを起こすリスクがあるので、継続したまま抜歯を行うのが望ましい。特に第ⅹa因子阻害薬リバーロキサバンを服用している心房細動患者が休薬した場合、ワルファリンよりも脳卒中や全身性塞栓症を発症するリスクが高いとされているので、抜歯時の中断は避けるべきと考える。ガイドラインでは、DOAC 継続投与のまま抜歯を行っても、適切な局所止血処置を行えば重篤な出血性合併症を発症する危険性は少ないとしている。

 また、DOAC 服用患者の抜歯やインプラント埋入手術などの口腔外科処置後の術後出血に関するシステマティックレビューとメタ解析の結果も、術後出血のリスクは健常者の3倍ではあるが、ビタミン K 阻害薬(ワルファリン)と同程度。出血の程度も、縫合や圧迫止血などの局所止血処置で止血し、重篤な出血の報告はない。

 DOAC 継続抜歯時に特に注意するべきことは、DOAC の血中濃度のピークを避けて抜歯を行うことである。ガイドラインでは、内服6時間以降、可能であれば12時間以降に抜歯を行うことを勧めている。DOAC には1日1回と2回服用する薬があるので、必ず患者に服用時間を聞き、抜歯する時間に留意する。

 

<症例 2 >

 トロンビン阻害薬 (ダビガトラン) 継続下の抜歯症例

  心房細動のために、ダビガトラン(プラザキサ)を服用していた。凝固検査 APTT は53.4秒であった。ダビガトランは1日2回服用する薬で朝7時に服用していたので、血中濃度のピークを避け午後1時に右側上顎第2小臼歯の残根を抜去した。抜歯窩には吸収性ゼラチンスポンジを挿入し、縫合した。抜歯時の異常出血、抜歯後出血もなかったので、夕方のダビガトランも内服させた。

 

<症例 3 >

 第ⅹa因子阻害薬(リバーロキサバン)継続下の抜歯症例

   心房細動のために、第ⅹa因子阻害薬リバーロキサバン(イグザレルト)を服用していた。同薬剤は1日1回服用する薬である。抜歯前に朝、夕どちらで服用しているのかを確認する。朝7時30分頃に内服していたので、血中濃度のピークを避け、午後3時頃に依頼のあった右側下顎第1小臼歯から中切歯、左側下顎中切歯および犬歯の6本を抜去した。抜歯中の出血は少量で、抜歯窩に吸収性ゼラチンスポンジを挿入し縫合した。抜歯後出血もなかった。

  第ⅹa因子阻害薬の血中濃度は、プロトロンビン時間(PT)に相関するとされているので、PT 値を確認した。服用約1時間30分後の PT は18.8秒と高く、約8時間後の抜歯終了時には14秒と下がっていた。1日1回服用の DOAC は、抜歯後にさらに血中濃度が下がるので抜歯後出血のリスクに関しては、1日2回服用の DOAC より少ないと思われる。

 

   

 

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