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2019年4月 4日 (木)

Clinical 抗血栓療法と歯科外科処置のアップデート ⑥

   
 

続き:

 

 

3 . 局所止血方法で止血困難な場合の対応

 

  頭蓋内出血や消化管出血などとは異なり、歯科外科処置においては十分な局所止血処置が可能である。対応困難な出血を起こした場合には、まずは手術野をよく観察し、血管損傷や顎骨損傷がないかを確認し可能な局所止血処置を行う。同時に、末梢血液一般検査、PT、APTT、PT-INR 値の測定を行い、抗血栓薬の作用以外にも出血傾向をきたす原因(血圧上昇、血小板減少、肝機能障害、抗菌薬や鎮痛薬などの併用薬の影響)がないか精査する。

  これらの検査値が高値で、最終的にワルファリン、ヘパリン、DOAC の作用を拮抗させないと止血が得られないと判断された場合には、医師との連携の上で中和剤の投与などの全身的止血処置を行う。

  ワルファリン服用患者では、重症度に応じワルファリンの減量または中止、ビタミンKの投与を行う。早急にワルファリンの効果を是正する必要がある場合には、新鮮凍結血漿、乾燥ヒト血液凝固因子第Ⅸ因子複合体製剤や遺伝子組み換え第Ⅶ因子製剤の投与を考慮する。

  ヘパリン投与患者では、ヘパリン減量や中止、および硫酸プロタミンによる中和を行う。DOAC の場合、ダビガトランに対しては特異的中和剤のイダルシズマブ(プリズバインド)があるが、第ⅹa因子阻害薬の中和剤開発中である。

 

 症例 9

 ワルファリンと抗菌薬の相互作用による歯肉出血(図:略)

   患者は、心不全に対しペースメーカーを植込み後、ワルファリンを服用していた。近歯科で、歯肉退縮に対し歯冠乳頭部にヒアルロン酸を注入後、右側上顎犬歯、第1小臼歯口蓋側歯肉に潰瘍を生じた。同時期に近皮膚科にて口腔カンジダ症に対して処方されたミコナゾール、イトラコナゾールによりワルファリンの抗凝固作用が促進され、歯肉潰瘍部から持続性の出血をきたし来院した。PT-INR 値は8.0と上昇していたので医科に対診し、ワルファリンを中断した。歯肉出血は、止血シーネに歯周パックを填入、圧迫により止血した。

   抗真菌薬は、肝薬物代謝酵素(CYP2C9、CYP3A4等)に対する阻害作用によりワルファリンの代謝が阻害され、抗凝固作用が増強される。2016年10月に、厚労省はミコナゾールとワルファリンの併用を禁忌とした。DOAC はワルファリンお比較し薬剤相互作用は少ないが、抗真菌薬には注意する。

 おわりに

  DOAC 服用患者の抜歯に関しては、ワルファリンや抗血小板薬同様に継続下での抜歯が推奨される。抜歯以外の歯科外科処置に関しては、抗血栓薬継続下に手術可能かどうかのエビデンスが不足しているが、抗血栓薬中断による重篤化リスクの高い脳梗塞や心筋梗塞を発症させないことが重要である。

 <主な抗血栓薬>

 ● 抗凝固薬

   (経口) ◍ ワルファリンカリウム→ ワーファリン ◍ トロンビン阻害薬;ダビガトラン(プラザキサ) ◍ 第ⅹa因子阻害薬:

          リバーロキサバン(イグザレルト)、アピキサバン(エリキュース)、エドキサバン(リクシアナ)

   (非経口) ◍ ヘパリン ◍ トロンビン阻害薬:アルガトロバン(ノバスタン、スロンノン)

 ● 抗血小板薬

   (経口) ◍ アスピリン(バイアスピリン、バファリン81) ◍ チエノピリジン系:チクロピジン(パナルジン)、クロピドグレル(プラビックス)、

          プラスグレル(エフィエント) ◍ シロスタゾール(プレタール) ◍ チカグレロル(ブリリンタ) ◍ ジピリダモール(ペルサンチン)

         ◍ イコサペント酸エチル(エパデール) ◍ サルポグレラート(アンプラーグ) ◍ トラピジル(ロコルナール)

         ◍ ベラプロストナトリウム(ドルナー、プロサイリン)、 ◍ リマプロストアルファデクス(オパルモン)

         ◍ クロピドグレル・アスピリン配合剤(コンプラビン)

 ● 血栓溶解薬

         ◍ 組織型プラスミノゲンアクチベータ(tPA : tissue-type plasminogen activator)、ウロキナーゼ

         

 

 

 

 

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