« Topics 現代の歯科医院に必要な予防的視点~患者・スタッフトラブル予防のポイント~ ② | トップページ | Topics 現代の歯科医院に必要な予防的視点~患者・スタッフトラブル予防のポイント~ ④ »

2019年4月26日 (金)

Topics 現代の歯科医院に必要な予防的視点~患者・スタッフトラブル予防のポイント~ ③

続き:

 

1 . 患者トラブル予防

 

1) 歯科における患者トラブルの特徴

 近年、歯科医療に関するリスクは高まってきている。最高裁判所統計資料によれば、全国的には、医事関係訴訟事件は減少傾向にあるが、歯科に関しては、横ばいもしくは微増である。

 そもそも、歯科という分野は、訴額(患者の請求額)が医科の分野に比べて低い傾向にある。医科の場合、医療行為が生命に直結するケースも少なくないため、患者が死亡もしくは重度の後遺障害が残存するなどの場合に、億単位の訴額になることも往々にしてある。

 しかし、歯科の分野では、歯科医療行為が生命に直接影響を与えるケースは少なく、トラブルが多い自由診療であっても、数千万円に及ぶことはほとんどない。

 2015/10/01からスタートしている医療事故調査制度における医療事故発生報告件数をみても、2015年10月~2017年12月までの総件数857件のうち歯科は僅か2件である。

 この制度は、あくまで予期せぬ死亡または死産についての数値であるが、歯科が医科に比べて死亡事例が少ないことはこの統計からも明らかである。

 また、民事裁判では患者側が医療機関の落ち度について証明しなければならないが、医療についての専門的知識を理解していないと困難である。従って、患者側は医療機関の落ち度を証明するために、協力医を探すケースが多い。仮に協力医に協力を得られたとしても、通常、その協力医に報酬を支払う必要がある。弁護士費用や協力医への報酬は、患者の請求が認められなくても発生するが、医事関係訴訟のその容認率は、一般民事事件に比べてはるかに低い率だ。 ※どちらも、2110年~2017年までの容認率は、通常訴訟は80%台である。対して医事関係訴訟では、20%~25%台である。

 仮に患者の請求が認められる可能性が高いケースであっても、それほど高額ではない請求を行う際には、場合によって費用倒れになる可能性もある。このように、患者側が訴訟提起することは、かなりハードルが高い。

 そうすると、歯科の分野は金額的要素からしても、医科の分野よりも、性質上訴訟にはなりにくいことが容易に想像できる。にもかかわらず、医事関係訴訟のうち歯科の割合が増加してきているということを、しっかりと認識しておかなければならない。

 なお、これらの統計はあくまで「地方裁判所で終了した件数」を集計したもの。つまり、現にトラブルが発生しているもののいまだ裁判に至っていないケースや、現在訴訟係属中のケースは含まれていない。また、医療裁判は、実際に医療事故が発生してから、訴訟提起までかなりの時間を要することも少なくない。従って、統計に表れる数値は、かなりのタイムラグがあるものと理解する必要がある。

 

2) 説明義務違反を予防回避するポイント

(1) 医療契約の性質

   医療行為は、準委任契約(民法656条、643条)と解釈されている医療契約に基づいて行われるため、「契約」違反によって、患者に損害が発生した場合、損害賠償責任を負う可能性がある(民法709条、415条ほか)。従って、医療契約がどのような「契約」で、どの要件に違反した場合に、責任を負い得るのか、医療契約違反の要件に該当しないようにするために、何をすべきかを知ることは、無用なトラブルを予防回避する上で、必要不可欠な視点だ。

(2) 説明義務の基準

   医療契約に関する代表的なトラブルは、医療契約に付随して医療機関側に発生する「説明義務」に関するトラブル。何故なら、患者側が、医療技術上の注意義務違反を立証することは困難である。一方、「注意義務」違反については、説明がなかったこと、もしくは、説明が不十分であったことを立証すれば足りるためである。

   それで、本稿では、損害賠償責任を負う要件の一つである「過失」(注意義務違反)について、代表的なトラブルである「説明義務」違反を例に、トラブル予防のポイントを解説する。

   説明義務の判断基準については、厚労省の指針および最高裁判所の判例にて示されている。これらの判断基準の中で重要な「リスク説明」および「選択肢の提示」を十分に意識して分かりやすく説明を行うことで、トラブル予防のポイントを防ぐことが可能となるのである。

(3) 書類整備の重要性

   ただし、上記判断基準を満たした説明を行うだけでは不十分である。後日、患者側が全く説明を聞いていないなどと主張した場合に、医療機関側がどんなに適切な説明を行っていたとしても、現場にいなかった第三者は真実を知るすべが無い。

   説明を行った事実や内容を事後的に検証できず、医療機関側が説明を行ったという事実を証明できなければ、説明をしなかったものと事実認定されてしまいかねない。つまり、説明義務を果たしていないとして、法的責任を負う可能性があるのである。

   従って、医療機関側が説明を行ったという事実を証明するためには、少なくとも、カルテや同意書などの書類の整備が必要不可欠である。カルテについて、裁判所は、その記載内容に改竄や矛盾などがある場合を除いて、原則として、カルテに記載された内容を真実のものとして判断する。従って、カルテにマイナス所見も含めて必要な記載を行うことが、事実認定判断に大きく影響し、裁判結果の命運を左右すると言っても過言ではないのである。

       <書類整備の重要性→その1>   明日に続く~

 

 

« Topics 現代の歯科医院に必要な予防的視点~患者・スタッフトラブル予防のポイント~ ② | トップページ | Topics 現代の歯科医院に必要な予防的視点~患者・スタッフトラブル予防のポイント~ ④ »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事