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2019年5月14日 (火)

~ アマゾンのNY進出騒動から読む~ ③

続き:

 

   変容するNYの「かたち」

 これから検討する都市の「かたち」とは、可視的、建設的な意味に加え、人々の「働き方」「暮らし方」を含む都市総体である。「働き方」は雇用形態、及び産業構造を含意する。「暮らし方」はソフト(人々のつながり)、ハード(住宅や商店街など)を含むコミュニティの姿態である。

 NYは2008年の経済危機後、都市の「かたち」を大きく変容させた。従前のファイナンスに加え、情報系ハイテク企業のエリートが新たなクラスターを形成するようになった。世界都市NYは、ファイナンスとハイテクの、2タイプのクリエイティブインダストリーが交差する座標軸上に都市の「かたち」を具現した。

 「アマゾンの進出」はそうしたNYの変容を、高速回転で加速することになる、というニュースだった。

 NYでは、1980年代以降、ウォール街のファイナンスとその周囲に集積する法律、会計、デザイン、テクノロジーの専門家集団、それに不動産業の寄り合い構造体が「FIRE(金融、保険、不動産の頭文字)」と呼ばれる市況産業クラスターを形成した。それを踏み台に、グローバル経済に甚大な影響力を誇る世界都市に飛翔した。

 しかし、FIRE依存の構造体は、常々、景気の波動に動揺する。したがって、基本的に脆弱である。1990年代にドットコム(ITソフトビジネス)ブームがおき、産業構造の多様化が進む、と期待されたが、その後、バブルが破裂。構造転換できなかった。さらに経済危機(リーマン・ショック)で大打撃を受け、FIRE依存の不安定性を露呈した。

 そこで当時のM・ブルームバーグ市長が打ち出したのが「贅沢都市」戦略だ。「高コストに適した企業とクリエイティブクラス」のための都市創りである。働きや暮らしの場面で高コストを負担を負担できない企業や中低所得階層は政策の対象外、という都市思想だ。赤裸々な、金持ち重視の都市政策だった。「NYに似合いのビジネスは安価な商品を売るウォルマート風ではない。付加価値の高い嗜好品の商売である」と言い切ってはばからなかった(International Socialism Review)。

 具体的には、工場、港湾地区の用途を変更してオフィイスや住宅建設を可能にし、大規模なウォーターフロント開発を推進した。アベニュー沿いの建物の高さ規制を緩和し、超高層ビルの建設を促した。そこにハイテク系のビッグビジネスやスタートアップ(起業)、ハイテクエリートの入居を誘った。その典型はアマゾン本社予定地に近接し、ロング・アイランド・シティに立地したコーネル大学のキャンパスである。

 「ハイテクエリート、起業家の輩出」を宣言して開学。以来、院生600人が卒業、その過半がNY市内の情報系ハイテク企業に就職しクリエイティブクラスになった(ニューヨーク・タイムズ)。授業料は高い、年間5万5000ドル弱(約600万円)、ビジネススクールは10万ドル超。典型的なエリート創造階級の養成校である。

 

 

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