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2019年5月 7日 (火)

都構想・万博・カジノ ①

森裕之(立命館大学教員)さんは、「分断都市大阪の民主主義」について雑誌「世界 4」に書いている。コピー・ペー:

 

「大阪都構想」の再燃と虚妄

 

事実上なんらの進展のないまま「大阪都構想」の住民投票が再度行われようとしている。しかも、今回は憲法改正や IR=カジノ推進と関係しながら、政権与党を巻き込んだ複雑な様相を呈している。

 

 2015年11月の大阪府知事・市長のダブル選挙で当選したのはいずれも維新の幹部であり、両議会の第一党も維新の会によって占められている。国政選挙における維新の得票数も大阪ではほとんど変化していない。これらは維新政治が大阪においてかなり固定化されたことを物語っている。

 このような政治的帰結として、再び「大阪都構想」への準備が進められてきた。「今回がラストチャンス」と叫んでいた2015年の住民投票で否決され、ダブル選挙において「大阪都構想」の住民投票の再実施を明瞭に訴えたとはいえないにもかかわらず、2017年に維新の会と公明党の水面下での取引を通じて法定協議会(大都市制度(特別区設置)協議会)が設置された。

 法定協議会では現在も「大阪都構想」の中身や会議の運営方法をめぐって激しいやりとりが行われているが、2017年4月に両党間で交わされた文書にはすでに住民投票の実施が合意されていた。

 この維新・公明両党による密約文書の存在は2018年末に明らかとなった。両党による住民投票の実施日程に関する見解に相違があり、そのことに立腹した松井一郎知事が「全部ばらす」と言い出したことで発覚した。維新の会は2019年の統一地方選挙までに「大阪都構想」の案をまとめ、その後の参議院選挙と同日で住民投票を実施する意向を持っていた。

 それに対して公明党は統一地方選挙までの協力を拒否し、参議院選挙後の実施に実施することを主張した。

 このような状況の中で、松井知事と吉村市長が共に辞職し、ダブル選挙を実施するという戦術を公にした。それぞれ市長候補と知事候補となる入れ替え出馬によるダブル選挙を実施するという戦術を公にした。入れ替え出馬を行う理由は、単なる出直し選挙であれば彼らの今の在任期間までの数ヵ月しか首長が続けられないが、それぞれが入れ替われば4年間の任期が得られるからである。「大阪都構想」を丁寧に説明するどころか、政党同士の政治ゲームによって全てが決められている。

 維新政治がそこまで推し進めようとしている新たな「大阪都構想」は市民が求めるようなものになっているのか。2015年の時の「大阪都構想」では、二重行政の廃止による財政効果は大阪府・市を合せても年間2~3億円程度しかプラスにならない一方で、初期コスト680億円と年間運営コスト15億円が発生することがわかった。つまり、「大阪都構想」は「二重行政の無駄をなくす」という政治スローガンとは異なり、財政的には膨大なマイナスでしかないものであった。

 今回新たに示されている「大阪都構想」について、大阪府・市は140億円という財政効果(改革効果額)の数字を示している。しかし、このほぼ全てが二重行政とは関係のない民営化・民間委託・経費節減であり、それらを除外した二重行政の廃止自体で生み出される財政効果は全体でたった4000万円しかなく、大阪市(特別区)においてゼロとなっている。

 また、2015年のときには「再編効果額」とよんでいた財政効果を今回は「改革効果額」とわざわざ表現を変えているが、これは前回暴露された財政効果と二重行政の無関係性を糊塗しようとする意図による。

 このようなゼロに等しい財政効果に対して、新たに必要となる財政負担は大阪市(特別区)だけで初期コスト520億円、年間運営コスト24億円と試算されており、「大阪都構想」はもはや検討するに値する代物ではない。それに加えて、都区財政制度による大阪市(特別区)の大阪府への財政的隷属の仕組みは全く同じである。

 政党によるこのような政治ゲームにおいて、市民の意向や暮らしは存在する隙間がない。しかも残念ながら、現時点では、そのことに対する市民の強い怒りも感じられない。そこには、市民がこの間に経験してきた不毛な政治ゲームを通じた政治行政に対する無力感や虚無感があらわれている。

 「大阪都構想」を看板政策として掲げた維新の会が2010年に誕生してから9年になるが、その間に維新政治が大阪の住民自治に与えたダメージは甚大であった。

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