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2019年5月23日 (木)

Clinical ~新規医療機器「エピシル 口腔用液」を中心に~ ②

続き:

 

1. 口腔粘膜炎の対応

 

 口腔粘膜炎は、いまだ標準的な治療法が確立されていないため、治療開始前からの適切な評価に基づく予防的な介入による、発症や重症化の抑制が重要となる。粘膜炎を惹起し易いレジメン(抗がん剤の種類や量、期間を定めた手順書)は既知のものであり、また口腔粘膜炎に対する口腔内、および全身の悪影響因子も認識されている。発症リスクが高いと予想される患者には、治療開始前にリスク因子を軽減しておく予防介入が推奨される(表:略→後で)。

 口腔粘膜炎の対応の目的は、①現行のがん治療が妨げられることなく円滑に進むよう支援すること、②がん患者の療養生活の質を担保すること、の2点である。そのためには粘膜炎の発生率(発症頻度)を下げるよう努めるだけでなく、粘膜炎の病悩期間の短縮や重症度の抑制を図ることも等しく重要である。

 Keefe らは、口腔粘膜炎が引き起こす諸問題のカスケードを提示した(図:略)。このカスケードに基づき臨床の現場では潰瘍形成によって生じる疼痛と局所感染を抑制し。粘膜炎によるがん治療への悪影響を抑制することが対応の主眼となる。

 

1) 感染制御

 不衛生な口腔内は、局所感染を惹起し粘膜炎のグレードを上げて疼痛を悪化させ、またその治療を遷延させる。骨髄抑制期には口腔粘膜炎の感染は局所にとどまらず、全身感染症への波及が強く懸念される。口腔内の衛生状態を良好に保つことで感染制御し粘膜炎の重症化を制御する。

 口腔内の感染制御に最も有効な方法は、物理的な汚染物の除去。治療開始前に、歯科による専門的口腔管理によって口腔内の汚染物を除去しておくこと、治療中でも適切なブラッシングと含嗽によって、良好な口腔内環境を維持するよう努めることがベースラインの予防策となる。

(1) 患者指導

   薬物療法中の口腔管理の担い手は、患者自身である。口腔内の状態に合わせた適切なセルフケア方法(ブラッシングや含嗽など)の指導、口腔内を定期的に観察し、変化があれば看護師等医療者に報告すること、一般的な生活指導(粘膜への刺激の増減を考慮し、刺激のある食べ物や硬い食べ物などは留意する、節酒禁煙など)を行う。また口腔粘膜炎の一般的な経過についてもあらかじめ教育しておくことが推奨されている。

(2) 粘膜の保護 ~粘膜への外的刺激の軽減による潰瘍形成の抑制~

   適合の悪い義歯や、うしょくによる歯の鋭縁部、歯周病による歯の動揺などによる口腔粘膜への外的刺激は、粘膜炎の発症トリガーとなり、また疼痛悪化や治癒遷延の原因となる。歯周病やう蝕といった歯科疾患は、その痛みなどで口腔内のセルフケアを妨げるだけでなく、感染源となって粘膜炎に悪影響を与える可能性もある。

   不適切な義歯の調整・う蝕鋭縁部の研磨・動揺歯の固定や抜去といった粘膜に対する外的刺激の除去や、う蝕の封鎖や歯周基本治療法など歯性感染病巣の応急処置など、必要な歯科治療を行っておく。頻繁な含嗽や保湿剤の励行も、粘膜への保護、外的刺激への軽減につながる。

 

2) 疼痛緩和

 口腔粘膜炎の発症時には、その疼痛のコントロールが非常に重要。粘膜炎の疼痛を緩和することで、経口摂取、口腔清掃による感染制御が苦痛なく行なえるよう支援しなければならない。痛みを我慢しても、良いことは何もない。

 粘膜炎の疼痛はほとんどが侵害受容性疼痛のため、NSAIDsやアセトアミノフェンが有効である。実臨床では粘膜炎の重症度に応じアセトアミノフェンまたは非ステロイド性抗炎症薬、オピオイドなどの局所麻酔薬を直接疼痛場所に作用させて疼痛を鈍麻させる。食事20~30分前の鎮痛薬の内服と、食事5分前の局所麻酔薬の口腔内適用にて、経口摂取の支援とする。

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