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2019年5月25日 (土)

Clinical ~新規医療機器「エピシル口腔用液」を中心に~ ④

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2) エピシル口腔用液の使用方法

 本液剤を数滴口腔内に滴下し(1~2押下で口腔粘膜全体を十分被覆できる量の液剤が滴下される)、舌などで患部に塗り広げると、唾液中の水分と反応して数分で潰瘍表面に接着性の保護皮膜を形成する。滴下直後に一瞬刺激を感じることがあるが、ほとんどすぐに刺激は消失する(患者には適用時に一瞬刺激を感じる旨を、あらかじめ伝えておく)。形成される接着性保護膜の薄さは約0.5~6.5μm程度で違和感はほとんどなく、味覚にもほぼ影響を与えない。この接着性皮膜は擦過などにより時間とともに徐々に剥離するが、1回の生じ程度ではその効果は減弱しない。

 Hadjieva らによる口腔粘膜炎を有する頭頸部がん放射線治療中の患者を対象にした、エピシル口腔用液の疼痛緩和効果を調べた臨床試験では、適用後5分で粘膜炎の疼痛スコアは速やかに低下、その効果は8時間にわたり持続したとされている。もちろんすべての例で効果があるわけではないが、多くの症例で疼痛緩和効果がみとめられている。また、今までは口腔ケア・含嗽のみで経過をみていたような軽度の口腔粘膜炎の症例に対しても、本材の使用により「違和感なく楽に食事ができるようになった」というように、がん治療中のかんじゃQOLの向上に貢献できた例もあり、実臨床においても有効手段であることを上野は実感している。

 

3) エピシル口腔用液を有効に使用するために

 エピシル口腔用液の使用そのものは簡便で、実際の使用は患者自身の自己管理が中心となる。しかし安全かつ有効に使用するためには、ただ漫然と口腔内に塗布するのではなく、次の2点の留意が必要である。

(1) 口腔内の感染制御(――口腔管理)が重要

   汚染されたままの口腔内にエピシル口腔用液を使用することは、感染管理の観点から推奨されない。歯科医師、歯科衛生士による専門的口腔ケアや、患者の口腔内の状態に合わせた適切なセルフケア指導といった歯科処置を十全に行い、口腔内の汚染物を除去し、感染リスクを制御した上での使用。

(2) 口腔粘膜炎の発症・増悪因子となる局舎因子の制御

   不適合な義歯の調整・う蝕鋭縁部の研磨・動揺歯の固定や抜去といった粘膜に対する外的刺激の除去やう蝕の封鎖や歯周基本治療法など歯性感染病巣の応急処置など、必要な歯科治療を行った上での使用。

   本材販売元の Meiji Seika ファルマが、エピシル口腔用液の概要や具体的な使用方法、また使用にあたっての注意事項について、ホームページ上で動画を用いた情報を行っている。参考にしてください。

 

4) エピシル口腔用液の保険診療上の取り扱い

 前述の理由により、保険診療の枠内でエピシル口腔用液の使用するさいには、医科と歯科の連携が必須となっている。またエピシル口腔用液は薬効成分がないことから、医薬品ではなく医療機器(クラスⅡ)に分類され、処方箋による処方ではなく、2018年度歯科診療報酬改定で新設された「周術期等専門的口腔衛生処置2」の歯科処置に紐づけての適用となっており、がん主治医と連携した歯科医師のもと適切な口腔機能管理を行うことで、はじめて患者に適用することができる。

 2018年4月の歯科診療報酬点数表には、エピシル口腔用液は「がん等に係る放射線治療又は化学療法を実施している患者であって、周術期口腔機能管理計画に基づき、口腔機能の管理を行っている患者について、放射線治療又は化学療法に伴う口内炎(口腔粘膜炎)に対して使用する」とあり、周術期等専門的口腔衛生処置2によるエピシル口腔用液の算定には、周術期等口腔機能管理計画策定料が算定されていることと、「口腔粘膜炎」の傷病名が必要である。また「一連の治療につき原則10mLを限度として算定する」とされているが、患者の状況により継続して(10mLを超えて)使用する必要がある場合は、エピシル口腔用液の材料料(752点/10mL) のみ算定して差し支えない(ただし診療報酬明細書の摘要欄にその理由を記載する必要がある)。

 

 

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