« ~ アマゾンのNY進出騒動から読む~ ⑦ | トップページ | Clinical ~新規医療機器「エピシル口腔用液」を中心に~ ① »

2019年5月20日 (月)

~ アマゾンのNY進出騒動から読む~ ⑧

続き:

 

   都市の対抗運動

 スーパースター都市が追及してきた創造都市政策は、結局、深刻な矛盾を増殖するメカニズムになった。そこに生まれたもう1件の対抗力――都市社会運動に触れる。

 ワシントンは低所得者住区を「特区」指定し、創造都市政策に熱心である。しかし、中間階層以上の白人が転入し、専ら黒人が排除される。そのため黒人住民が「創造都市政策は公民権法に違反する」と訴訟をおこした。シアトルでは、急増するホームレスに対し抜本的な対策を求める市民運動に押され、大企業の従業員(ハイテクエリート)に「人頭税」を課税して、それを原資にシェルターを増設する条例が成立した(その後、アマゾンなどが反対運動を組織し、条例は破棄された)。

 NYでは住民が結束し、激しいジェントリフィケーションが進行中のブルックリンでそれを抑制する都市計画規制を求め、NY市当局と協議が続いている。

 「ジェントリフィケーションと立ち退き現象」を展示するギャラリーや、それを演じる小劇場もある。今般のアマゾン反対運動もこの範疇に入る。裁判、デモ、メディアに投稿――など、その手法は多様だが、いずれも創造都市政策に異議申し立てをする都市社会運動である。

 1960年代に「古い都市危機」に対応する都市更新(大規模スラム一掃や高速道路建設)が広く行なわれ、それに反対する都市社会運動が高揚したことがある。

 NYではジェイコブズ(在野の都市研究家・都市運動家、名著『アメリカ大都市の死と生』がある)が、当時、開発担当局長として権勢を誇ったR・モーゼスと闘い、高速道路計画をつぶした。

 都市社会学のM・カステルは『都市とグラスルーツ』を著作し、都市社会運動の比較研究をした。しかし、情報系ハイテク企業の集積を促す創造都市政策に反発する昨今の都市社会運動は、大規模公共事業に反対したかっての都市社会運動とは時空間が違う。21世紀の新しい都市社会運動である。

 こうした都市社会運動の高揚に対して情報系ハイテク企業側も危機感を抱き、対応を急ぐようになった。マイクロソフト(本社ワシントン州レドモンド)が最近、住宅費の高騰が激しいシアトル都市圏内にアフォーダブル住宅を建設するのに500万ドルを地元基金に供与し、サンフランシスコ湾岸に中間階層以下のために住宅開発を支援するプログラムを発表した。

 かっての製造業が煤煙や垂れ流し汚染水などの「外部不経済(起業活動が生む社会的費用)」に対して責任を問われたように、今度は情報系ハイテク企業がその企業活動に付随する都市問題に対して費用負担を求められる状況になってきた。

 今後、アメリカ都市はどこに向かうのか。読み解くカギは成長と革新の資源を寡占し、それ故に矛盾を露呈するスーパースター都市にある。換言すれば、①その流れを反転し、多核分散型都市構造へ回帰を促す対抗力、②格差と不平等を生む創造都市に対抗する都市社会運動――その行方にある。アメリカ都市史の次幕は、これらの対抗力が重奏する時空間に広がる。

 また、政治的には、南部、中西部を含め、クリエイティブクラスターの形成が進む都市ではブルー(民主党)が濃い。都市社会運動はリベラル左派である。だとすれば、今後、2件の対抗力がさらに伸長すれば、大統領・連邦議会選挙にも影響を及ぼすようになる。

 

« ~ アマゾンのNY進出騒動から読む~ ⑦ | トップページ | Clinical ~新規医療機器「エピシル口腔用液」を中心に~ ① »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事