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2019年6月 9日 (日)

Clinical バイオフィルムを管理→予防歯科 ⑥

続き:

 

 

10. 予測歯科に向けて

 

 ポスト平成の歯科医療に期待されるパラダイムシフトは予測歯科の実現である。この予測歯科とは、発症前に口腔疾患発症リスクを客観的・定性的に評価し、リスクに応じた予防策を提供し、将来の発症を未然に防ぐことを目的としている。

 予測歯科では、科学的病因論を明らかにし、疾患の発症を予測する予知性の高い客観的指標を設定しなければならない。この指標を用いて将来の発症の危険度(発症リスク)を評価する。

 う蝕のリスク評価は歯周病に比べ一歩進んでいる。カリエスリスクレーダーチャート、CAMBRAなどのシステムがすでに日常の臨床二導入されている。

 自身の疾患リスクが分かるということは発症予防に大いに役立つ。例えば CAMBRAでは、リスクを4段階に分けて患者の現状を理解しやすくしている。CAMBRAでエクストリームリスクと判定された患者は、何の予防手段も講じなければ「将来むし歯になる」という自分の未来の運命を知ることができる。う蝕発症のリスクを我が事と感じることが、ホームケアとプロフェッショナルケアとの両輪を動かす原動力となる。

 歯周病においても、3つの発症要因(感染要因・宿主要因・環境要因)のそれぞれにおいて将来の発症リスクを評価できるシステムの臨床導入が待たれている。現在、細菌学的評価(バイオフィルム)、細胞生物学的・遺伝学的評価(歯周組織の抵抗性)、生活習慣の評価を可能とする予測指標の探索が進んでいる。今後、発症要因ごとに予知性の高い予測指標が定まってくることが期待されているが、現在のところ、歯周病のリスク評価指標として使用できるのは、細菌検査による細菌学的評価と、喫煙や飲酒などの生活習慣の評価である。宿主因子については、遺伝子多型などいくつかの候補が報告されているものの、さらなる検討が必要とされている。

 

11. う蝕と歯周病は管理が必要な慢性疾患

 

 Microbial shift が元に戻ってバイオフィルムが低病原性となっても、レッドコンプレックスをはじめとする歯周病原性菌はバイオフィルムに存在し続ける原因菌が駆逐できないということは、歯周病は完治しないことを意味している。我々は、最新の病因論を理解し、バイオフィルムと歯・歯周組織のバランスが崩壊しないように、長期の管理を行わなければならない。患者の生活と社会的背景は、う蝕と歯周病の発生・再発に大きな影響をもっている。患者のすべての要因を包摂し、患者の生涯にわたるバイオフィルムの管理が望まれる。

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