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2019年6月24日 (月)

政治のプライバシーとプライバシーの政治 ①

宮下 紘(中央大学総合政策学部准教授)さんの小論文を載せる。 コピー・ペー

 

1 政治のプライバシーの危機

 

 主権者である国民は投票の自由を有し、その投票の秘密が保障されている(憲法15条)。この憲法上の投票の自由と秘密は新たな監視技術により覆されようとしている。

 この民主主義への挑戦は、フェイスブックの最大8700万人の個人データが、イギリスに本社を置き、選挙活動のコンサルティングを行ったデータ分析会社であるケンブリッジアナリティカ等へと流用された事件(以下、「FB=CA事件」という)から理解することができる。

 元ケンブリッジアナリティカ研究員として内部告発をしたクリストファー・ワイリーは、欧州議会の公聴会に於いて、EU離脱をめぐるイギリスの国民投票においてフェイスブックの個人データを悪用した「でっちあげ」があったことを認めた。ワイリーは、「ケンブリッジアナリティカにより作られたデータターゲット技術とアクターネットワークがなければ、イギリスのEU離脱は起きなかったと信じている」と証言した。個人データ分析による選挙の操作が示されたのである。

 FB=CA事件は、イギリス選挙で起きた対岸の火事で済まされない。実際、この事件の発端となった心理アプリを利用し、個人データが流用された可能性がある日本の利用者は最大で約10万人にのぼる。即ち、既に日本の利用者の個人データを用いた投票行動に影響を及ぼすことは物理的に可能であり、全く、同じ事件が日本の選挙でも生じうるものである。

 FB=CA事件は、単に個人のプライバシーの問題にとどまらず、プライバシーが適切に保護されないことで民主主義それ自体が危機にさらされたことを主題化させた。プライバシーの主題は、もはや個人の私生活や商取引における監視の脅威にとどまるものではなく、民主主義への挑戦となった。この小論は、この主題を通し、「政治のプライバシー」の危機を説示し、そして「プライバシーの政治」の必要性について論じていく。

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