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2019年6月 8日 (土)

Clinical バイオフィルムを管理→予防歯科 ⑤

続き:

 

 

8. P. gingivalis の歯周病原性を決める遺伝子型

 

 すべてのP.gingivalis が同じ歯周病原性をもっているのではなく、歯周病原性は本菌の遺伝子型によって異なる。P.gingivalis の菌体表面には線毛とよばれる毛が生えている。細菌の最も外側に位置する線毛は、P.gingivalis の口腔への感染、歯周組織細胞への侵入、炎症誘導などに関与する重要な病原因子である。線毛因子には異なる6種類の型がある。

 6種類の中で、Ⅱ型線毛の歯周病原性は極めて高い。Ⅱ型線毛をもつ P.gingivalis に感染している患者は、感染していない場合に比べオッズ比44.44の歯周炎リスクがあることが示されている。

     ※ P.gingivalis 線毛遺伝子型と歯周炎発症リスク

          線毛型          オッズ比

          Ⅰ型            0.16

          Ⅰb 型           9.21

          Ⅱ型           44.44

          Ⅲ型            1.96

          Ⅳ型           13.87

          Ⅴ型            1.40

 広島大学病院小児歯科外来の受診患者400人(2~15歳)のプラーク細菌を調査、→P.gingivalis が検出されたのは、健康歯肉患者134名のうち2名、歯肉炎患者239名のうち24名、歯周炎患者27名のうち8名であった。

 検出された P.gingivalis の線毛遺伝子型は、ほとんどがⅡ型とⅣ型だ。このような若年での歯周病発症は侵襲性歯周炎の可能性が考えられ、子どもの歯周病においてもⅡ型 P.gingivalis は高リスク因子となっているようだ。

 

9. 歯周治療の目標

 

 歯周ポケット内に血液が供給され続ける限り、バイオフィルムの高病原性は続き、歯周病は慢性化し、進行する。さて、歯周病を止めるには如何すれば良いか。

 目標は、①浅いポケット、アタッチメントレベルの改善、②骨レベルの改善、③あるいは付着歯肉幅の増加であるとされている。しかし、歯周病の発症原因は Microbial shift である。その要因を取り除き、歯周病発症前のバイオフィルムの質に戻すことが(治療)目標である。

 最も重要なことは、ポケット内潰瘍面の閉鎖(上皮バリアの修復)により歯周病菌への血液供給を断ち、かっての低い病原性をもつバイオフィルムに戻すのである。

 Subgingival debridement (縁下バイオフィルム・歯石の機械的除去)を行い、歯根面の汚染除去を行う。細菌量の多い歯周ポケットでは、軟組織や細胞内に侵入した歯周病菌の除去・減少も必要であろう(毛細血管が豊富な肉芽組織は歯周病菌の格好のすみかである)。感染因子を取り除き、歯周ポケットの環境変化をもたらすことにより、元の細菌叢を取り戻し、「歯周病菌と歯周組織の拮抗」を得ることができる。

♦ 発症予測のリスク診断:歯周細菌検査

 歯周病は感染症だ。感染症の治療に際して、真っ先に行うべきは細菌検査であると筆者(天野)は考える。重篤な歯周病と関連して検出された細菌種は、ピラミッドの頂点に君臨するレッドコンプレックスであり、これら”要注意”3菌種 ( P.gingivalis T.forsythia T.denticola )の感染は歯周細菌検査で確認できる。

 歯周病菌 DNA の検出は、国内外の検査会社で受託検査を行っているため、特別な装置を持たない歯科医院でも、診断の一助として利用できる。

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