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2019年6月 5日 (水)

Clinical バイオフィルムを管理→予防歯科 ②

続き:

 

 

2. 抗菌薬療法

 

 抗菌薬(抗生物質)には殺菌あるいは静菌作用がある。しかし、バイオフィルムは殺菌・静菌効果をもつ物質や免疫物質の内部への侵入阻止することはよく知られている。おまけに、抗菌薬は細菌に取り込まれて初めてその効果が出る。バイオフィルムの奥で休眠状態の細菌は代謝を極端に低下させており、外部から栄養素を取り込まないため、抗菌薬も取り込まない。

 仮に抗菌薬が取り込まれ劇的に効いたとしよう。細菌は数10分~数時間で2倍に分裂する。99.9%の殺菌を果たしても、0.1%が生き残ればバイオフィルムは元に復してしまう。それを防ぐためには、継続的な抗菌薬の投与が必要になってくる。だが、そんなことをすると耐性菌の出現、腸内細菌叢の撹乱など好ましくない事象を招いてしまうのだ。

 

3. 抗菌療法

 

 抗菌療法という名前はよく耳にする。しかし、抗菌の概念定義ははっきりしない。抗菌とは「細菌に抗う」こと。細菌に挑めば戦いに敗れたとしても抗菌療法と言えるのだろうかと疑念も湧く。調べてみると細菌増殖抑制の意味合いで抗菌が使われることが多い。

 水分と養分のない乾燥表面では細菌は増殖しない。となると特段の工夫をしなくても、表面がツルツルのスリッパや机は乾燥させれば抗菌ということになる。抗菌ではなく、除菌、静菌などと表現してほしいものであるが、どちらにしても抗菌療法では細菌の駆逐には至らない。

 

4. だから予防歯科

 

 21C.になって、う蝕と歯周病の原因は高病原化したバイオフィルムであることが示された。低病原性のバイオフィルムが高病原化することが口腔の2大感染の原因であった。従って、病因除去とは高病原性バイオフィルムを低病原性の状態に戻すことである。

 バイオフィルム細菌を駆逐できなくても、バイオフィルムの病原性を管理できれば病因を取り除くことができるし、発症予防も可能となる。これは予防歯科の仕事である。

 では、如何すれば予防歯科を実践できるのか。予防歯科の目的は、100%歯磨きの指導でも、歯石フリーの完璧なプロフェッショナルケアでもない。バイオフィルムの病原性が高くならないようにオーダーメイドで管理し、同時に歯と歯周組織を鍛え、歯・歯周組織とバイオフィルムとの均衡を維持することである。そのために、まず「どうしてう蝕と歯周病は起こるのか?」のバイオロジーを理解しなければならない。

 

5. Microbial shift

 

 バイオフィルムの病原性が高くなるのは新たな細菌種の感染によるものではない。常在菌のMicrobial shift による。Microbial shift とは、バイオフィルムを取り巻く栄養、温度、嫌気度、pH などの環境変化によって、細菌達にとって好ましい生育環境がもたらされることにより起こる。

 病原性をもつバイオフィルム細菌が活性化し増殖し、バイオフィルムのトータルの病原性が高まる。バイオフィルムが「定常の低病原性」から「非定常の高病原性」にシフトするのである。

 Microbial shift によりバイオフィルムと歯・歯周組織の間の均衡が崩れ、う蝕や歯周病が発症・進行する。

 Microbial shift は人体の他の細菌叢でも起こる。腸内細菌叢の Microbial shift は深刻な全身疾患の発症や進行につながることが知られている。

 

 

 

 

 

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