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2019年6月25日 (火)

政治のプライバシーとプライバシーの政治 ②

続き:

 

2 FB=CA事件とは何だったのか

 

 ケンブリッジアナリティカ等のデータ分析会社は、「マイクロターゲティング」という分析手法で、従来の集団としての投票行動の予測と異なり、個々の投票者のFBの投稿履歴や友達等を分析し、パーソナライズされた広告を配信して、特定の投票者の行動をターゲットにするものである。

 利用者が予測していた以上に複雑な経路で流通したFBの個人データは、当初性格診断テストのアプリ開発のため、ケンブリッジ大学計量心理学研究所の研究者に提供された。この研究者が、最大約8700万人分のFBの個人データをSCLEグループのケンブリッジアナリティカと SCLE Election へと流通させた。ここから、個人データはカナダの選挙コンサル企業 (Aggregate IQ)へと売却され、EU 離脱の広告がFB 利用者に配信されるなどした。

 このカナダの企業が EU 離脱の政治団体のための広告作成し、FB広告に約150万ポンドを支払配信してきた。因みに、この企業と手を組んだ Vote Leave が配信した広告の一例を挙げれば、「7600万のトルコの人々が EU に加盟しようとしている」として、(仮にそうなれば)「イギリスの新たな国境はシリアとイラクになる」、といったものであった。

 このほかに、Leave.EU という政治団体と保険会社 (Eldon Insurance) との間では、EU 離脱を呼びかけるダイレクトメールが100万通以上送信されていたことが明らかにされている。さらに、子育て層の有権者を想定した妊娠女性や育児関連の個人データを保有する企業から政党への個人データの売却や、政党が保有する個人データも用いられてきたことが明白になった。

 個人データの流用の発端となった、ケンブリッジ大学が開発した性格診断アプリの利用者において、FB の個人データは、次の10項目が収集されていた。①公開プロフィール、②生年月日、③居住地、④タグづけられた写真、⑤「いいね!」を押したページ、⑥タイムラインの投稿、⑦ニュースフィード投稿、⑧友達リスト、⑨Eメールアドレス、⑩メッセージである。

 これらの情報の多くを公開あるいは限定公開していることが多いとしても、友達同士のメッセージの内容についても共有されていた。さらに、たとえ、自らが性格診断アプリを使っていなくても、FB の友達がこのアプリを利用していれば、①~⑤の個人データがケンブリッジアナリティカ等に共有されていた。

 これらの FB の個人データの提供について、プライバシーポリシーには一切記載はなかった。

 FB=CA 事件の調査の舞台はイギリスにおいて、2017年5月、情報コミショナー (Information Commissioner's Office 以下、ICO)により着手。2018/03/23、ICO が裁判所から令状を得て、ケンブリッジアナリティカ社の捜索を行い、データサーバー等が押収された。FB 利用者の個人データは、分析され、そして共有され、EU 離脱の国民投票の帰結をもたらすために利用されてきたことが明らかにされた。

 ICO の調査によれば、2014/10/24、ケンブリッジアナリティカを傘下に置く SCLE はFB に対し約27万ポンドを支払い、また2014/11/04、SCLE はカナダ企業Aggregate IQ に対し1万4000ポンドの支払いをしていた。無料のサービスで得た FB が保有する個人データについて、選挙活動を目的とした金銭授受とこれらの組織の関係性が確認されている。

 ICO が公表した調査報告書によれば、FB は①不公正な個人データの処理による違反と、②適切な技術的組織的措置の違反があったと認定。①については、プライバシーポリシーに性格診断アプリの利用によって個人データが共有されることに関する記載がなかったこと、そして友達がこのアプリを利用しているだけで本人の個人データまで共有されていたことなどが個人の合理的なプライバシーに反するものであると判断された。

 ②の安全管理措置については、ケンブリッジ大学のアプリ開発の際に適切な監督責任を果たしてこなかったため、大学からケンブリッジアナリティカ等の複数の企業に選挙活動のために個人データが利用されたことを非難した。

 ICOは、FB に対し、当時制裁金の最大額であった50万ポンドの支払を命じた。なお。一連のデータ流通の中心的役割を果たしてきたとされるケンブリッジアナリティカは2018年5月に破産したため、ICOは同社に対する制裁金は命じていない。

 

 

 

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