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2019年6月 6日 (木)

Clinical バイオフィルムを管理→予防歯科 ③

続き:

 

6. う蝕の最新病因論

 

1) う蝕原性菌

 ミュータンス球菌は間違いなく最強のう蝕原性菌であるが、21C.になって、ミュータンスレンサ球菌以外の酸産生菌も、う蝕偶発症に関わっていることが明らかになった。砂糖(ショ糖)はミュータンスレンサ球菌が不溶性グルカンを作るために必要であるため、う蝕予防の食事指導は「甘い物を避けなさい」であったのである。

 しかし、新たにう蝕原性菌に加えられた細菌種は不溶性グルカンは作らず、歯面に付着したバイオフィルムの中で酸を産生するため、ショ糖が制限されても影響は少ない。

 

   <う蝕原性菌 と う蝕誘発性糖類>

     20C.の常識                  21C.の常識

   う蝕原性菌                  う蝕原性菌

   ●ミュータンスレンサ球菌          ●ミュータンスレン

                             サ球菌

   ●ラクトバチラス                ●ラクトバチラス

                             ●ビフィズス菌

                                ●Actnomyces種

                             ●Scardovia 

                              Wiggsiae種                             

                             ●Veillonella 種

   う蝕誘発性糖類                う蝕誘発性糖類

   ●砂糖(ショ糖)                 ●発酵性糖類

                              ショ糖、ブドウ糖、

                              果糖、

                              調理デンプン

 

2) う蝕原性バイオフィルムの Microbial shift

 う蝕原性菌はショ糖だけではなく、他の発酵性糖質(ブドウ糖、果糖、調理デンプン)を摂取して乳糖などの有機酸を産生し、歯を溶かす。ショ糖が制限されても、その他の糖類摂取によって、バイオフィルムのpHは酸性に傾く。そして酸性環境を好む菌種が増殖しMicrobial shift が起こり、う蝕原性の高いバイオフィルムへと変化してしまうのである。

 「甘い物を避けなさい」の食事指導は変わらなければいけない。調理デンプンもMicrobial shift の要因となるため、麺類や粉物にも注意が必要だ。マヌカハニーはショ糖を含まないので、むし歯予防にいいと言われている。しかし、このハチミツはブドウ糖と果糖はたっぷり含んでいる。

 一方、酸を中和する常在菌が歯肉縁上バイオフィルムにいることがわかった。常在レンサ球菌の中にはアンモニアを出す菌種が存在する。アンモニアはアルカリ性のため酸を中和するので、このような菌種が多い人はう蝕になりにくいと考えられている。

 

3) う蝕の治療

 21C.になって、う蝕という疾患は「脱灰と石灰化のバランスが偏っている状態であり、う蝕=う窩ではない」という考え方が浸透した。脱灰因子と防御因子(脱灰を防ぎ石灰化を促進する因子)の間のバランス崩壊はバイオフィルムの周囲環境(特に栄養環境)の変化によるMicrobial shift が原因。

 疾患の治療は病因除去だ。う蝕の原因はMicrobial shift であるため、高病原化したバイオフィルムを低病原性に戻すことがう蝕の治療である。つまり脱灰因子を減らし、防御因子を増やすことであり、削って詰めることではない。

 改善すべき脱灰因子は、食事内容・回数(バイオフィル栄養環境)とう蝕原性菌量(バイオフィルムの量)である。また、含嗽剤や唾液分泌刺激などによりバイオフィルムのpHを中性に向かわせる工夫も必要。

 防御因子の強化には、フッ化物による歯質強化、クロルヘキシジンによる殺菌、フィッシャーシーラント処置、生活習慣指導、あるいは早期治療などの対応が有効である。

 

 

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