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2019年7月28日 (日)

ゲノム編集食品がやってくる ③

続き:

 

■ 問題点が次々と指摘される

 ゲノム編集は DNA を標的とする場所で切断して遺伝子の働きを壊す技術である。元来、壊してよい遺伝子などあり得ない。加えて最大の問題点として指摘されているのが、想定外の個所を切断するオフターゲットと呼ばれる現象が起きることである。

 思いもかけない遺伝子が破壊されると、それにより大事な遺伝子の働きを奪ったり、異常を起こさせたりする。その問題が次々に明らかになっているのだ。

 最近発表されたいくつかの研究論文を紹介する。まず英国ウェルカム・サンガー研究所の研究者たちが、ゲノム編集が従来考えられているより遺伝子に大規模で複雑なダメージを引き起こすことを明らかにした。この研究結果は、「ネイチャー・バイオテクノロジー」誌 2018/07/16 号、に掲載された。

 この遺伝子のダメージは、現在、オフターゲットを検出するために用いている標準的な手法では見逃されてしまうことも指摘している。実験を行ったのは、同研究所のマイケル・コシキらで、マウスのES 細胞(胚性幹細胞)やヒトの網膜の細胞を用い、ゲノム編集の代表的な手法である CRISPR-Cas9 (クリスパー・キャスナイン)を用いてゲノム編集を行なったところ、多くの細胞の DNA で大規模な欠失を起こしたり、遺伝子の複雑な入れ替わりをもたらしていた。

 しかも、それらの変化のいくつかは、標準的な判定個所から離れており、従来の検査方法では引っかからない個所で起きていることが分かった。研究者によると、これはゲノム編集による予期しない事象の初めての体系的評価であり、これまでこのような予期しない現象は過小評価されてきた、と指摘している。

 また、ゲノム編集技術を用いて行われた遺伝子治療をオーストラリアの研究者が追試験したところ DNA に大きなダメージが起きていたことが明らかになった。これは米国オレゴン健康科学大学のショーラート・ミタルポフらの研究チームが、ゲノム編集技術を人の受精卵に適用して、遺伝子を操作し、成功したとして、2017/08/02、付「ネイチャー」誌(オンライン版)に掲載されたものを追試験したもの。

 オレゴン健康科学大学では58個の受精卵が作られ、そのうち42個で遺伝子の変異が見られなかったという。追試験を行ったのは南オーストラリア州保健医療研究所の研究者でありアデレード大学教授のポール・トーマスで、オーストラリアではヒト受精卵を用いた実験が認められていないため、マウスの胚を用いて実験を行っている。その結果、約半数の胚で100以上の個所で DNA に大きなダメージが起きていた。この結果は2018/08/09、付「ネイチャー」誌(オンライン版)に掲載された。

 最近でも、「サイエンス」誌のオンライン版(2019/02/28)にゲノム編集とオフターゲットに関する2つの論文が掲載された。これらの研究も、ゲノム編集技術が予想以上に意図しない突然変異を誘発していることを示している。

 ひとつは中国神経科学研究所の E・ツオらがマウスを用いて行った実験で、もう一つはマサチューセッツ大学ボストン校の S・ジンらが稲を用いて行った実験である。前者の実験では、ゲノム編集を行っていない対照群に比べ約20倍の突然変異が起きていることが指摘された。

 このようにオフターゲットは、起きることが確実である。そのことが分かっていながら、環境省や厚労省は、大半のケースについて規制しないことを決定した。これは研究や開発、そして経済効果を優先し、食や環境への影響を軽視し、市民の健康や知る権利を”ないがしろにするものでしかない”。

 

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