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2019年7月 2日 (火)

マイナンバー・リスク ②

続き:

 

<確かに便利――監視にも犯罪にも>

 

――政府は、なぜ今マイナンバーを導入する必要があるとしたのでしょうか。

白石 政府は、「公平・公正な社会の実現」「行政の効率化」「国民の利便性の向上」を謳っています。すべての国民に12桁の番号を付して、あらゆる情報を瞬時に検索可能にすれば、税の情報、福祉の情報、医療情報等、一人の人間のあらゆる情報にアクセス出来る、と。これを「利便性の向上」と考えるのか、それとも「行政による国民監視・管理」と考えるのか、ということが、先ず問われるところです。

 導入を巡る議論の際、政府は「世界各国で導入されている」と宣伝したのですが、実際には、日本の「マイナンバー」のように、生活の様々な領域を一つの番号で管理している国は殆どありません。白石が思いつく限りでは、韓国と北欧、エストニアぐらいですね。ただ、エストニアの人口はわずか130万人程度だ。アメリカやカナダ、欧州各国などは分野ごとの番号制になっている。

 例えば、オーストラリアの番号制度は、所得の把握と徴税などに限定した納税のためのシステムとしてむしろ効率的に機能しています。しかも、強制では無く、番号を拒むこともでき、その際に不都合も生じない。

 しかし、日本政府は、国民生活の全分野を通貫する一つの、そして不変の番号ということに拘りました。ここには明らかに、国民を管理し監視しようという戦前の内務省的な発想が感じられます。

 そもそも人口1億2622万人(2019年3月総務省概算値)という規模で様々な交錯する多分野の情報を一つの番号で管理するということが技術的に可能にしたうえで、マイナンバーを新幹線や原発に並ぶインフラ輸出の目玉にしたいと考えていたのです。少なくとも2014年、15年段階の政府資料では、そのような位置づけられています。マイナンバーの周囲に群がるIT企業と連携して輸出に結びつけようと目論んでいたわけです。

 しかし、この目論見は成功しないでしょう。所得の捕捉をしたいのであれば納税者番号に限定化すればいいし、それを医療保険証と結びつけたり、まして図書館の貸し出しカードや民間のポイントカードとリンクさせたりする意味がありません。情報流出の際のリスクが大きくなるだけで、全く合理性がない。番号による一元的管理に対して市民の反発も強いので、結局普及せず、維持コストばかりがかかっていくという、まさに今の日本が直面する状況に陥る可能性のほうが高い。国民を生活の隅々まで監視する、という目的ならば「便利」に「活用」できるかもしれませんが。

 IT社会の到来とともに、様々なIDやパスワードを個人として管理しなければならなくなっています。パスワード同じものを使い回さないこと、そして頻繁に変更することを推奨されていますよね。マイナンバーは、これと正反対のシステムであるわけです。盗まれた場合などを除いて、基本的に同じ番号で一生涯不変、というわけですから。

 当然、番号が流出した際の被害も大きくなることが予想されます。たとえば、マイナンバーと銀行口座との紐づけがすでに始まっていますが、2021年からはそれが強制となる可能性がある。マイナンバーを通じて個人の預金情報まで把握できることになるわけで、税務署や警察にとっては便利でしょうが、犯罪組織にとっても「便利」です。まして、入手できるのは預金情報だけでなく、その他の個人情報も入手できるということになれば、「振り込め詐欺」の集団も手間が省けることになるでしょう。

 預金口座の紐づけを巡っては、全国で12億件あるといわれる銀行・ゆうちょの口座すべてに番号を付けるためには大きなコストがかかります。そこで銀行協会などが悲鳴をあげ、紐づけは新規口座開設だけにとどまることになりました。それはそれで当然だろうと思いますが、しかし、そうなると、普遍性を持たないシステムとなるわけで、そんな中途半端な制度に意味があるのか、大きな疑問です。

 韓国では2014年、1億人分を超えるクレジットカードや銀行口座に関する個人情報が盗まれていた発覚しました。この中には当時の朴槿恵大統領や潘基文国連事務総長の個人情報も含まれていたとされ、大事件に発展しました。日本型の総背番号制をとっている国で、比較的人口規模で近いのは韓国だけですが、韓国の場合、歴史的に北朝鮮との緊張関係を背景として国民背番号制が導入されてきた経緯があります。

 番号には指紋と顔写真、さらに近年では携帯電話番号とも連動しているため、闇社会に流出してしまうと大変な被害が起きてくることになるのです。

 アメリカでも年間900万件を超える社会保障番号(SSN)関連のなりすまし犯罪が発生しており、連邦議会でたびたび公聴会が開かれるほど大きな社会問題になっています。このような事態になっていることが日本では殆ど報道されていません。

 

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