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2019年7月25日 (木)

Science 免疫チェックポイント阻害剤 オプジーボ開発の出発点 ⑤

続き:

 

おわりに

 

 以上、当時の本庶研についてお話をさせていただいた。石田先生の並々ならぬ熱意に基づいて発見された PD- 1 であったが、その機能は縣先生との必死の研究でも解明されることはなかった。そんな中、PD- 1 には必ずや何らかの機能があるに違いないとして研究を継続された本庶先生の信念は、何者にも勝る勇気といわざるを得ない。

 さらに、マウスの系統確立に携わった西村先生の仕事は、「本当に疾患を発症する系統を突き止めることができるのだろうか」という底知れぬ不安との戦いでもあった。しかしこうした幾多の試練を、多くの研究者がまるで襷でリレーをつなぐかのように乗り越え、その一つひとつの成果を育み、当初思いいもよらなかった新規がん治療法の開発に至ったのであった。

 当時の本庶研での研究生活は、昨今話題になっている働きすぎや、働き方改革などの問題をはるかに超越したものであった。しかし、それでも研究者たちはクタクタになりながらもへこたれず、ただひたすらに研究に打ち込んでいた。そのひたむきな姿に、ただただ敬意を表するばかりである。

 PD- 1 発見当初とノーベル賞をつなぐ長い長い道のりは、卓越した研究者達の真摯な思いとその情熱なしには完結し得なかったものなのである。

 本物の基礎研究は大いなる痛みと喜びを伴うものであると思う。著名な動物行動研究者である竹内久美子先生は産経新聞のコラムにお書きになっている。「基礎研究に力を入れる国こそが真に文化の高い国なのである」と。国家や大学における基礎研究とは、かくも大切なものなのである。

 こうした歴史的な出来事を目撃し得たことは、筆者(浅野)の人生における最大の喜びの一つである。すばらしき研究者たちに巡り合わせ、かけがえのない経験を授けてくださった茂呂周先生に心から深甚なる感謝を申し上げたい。

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