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2019年7月22日 (月)

Science 免疫チェックポイント阻害剤 オプジーボ開発の出発点 ②

続き:

 

2. 相談役 石田靖雅先生

 

 本庶研では、1988年に、IL- 2 receptor トランスジェニックマウスの作製と、この解析結果を Nature 誌に掲載していた。本論文の共同著者に石田靖雅先生がおられた。石田先生は現在、奈良先端科学技術大学院大学の准教授として研究に継続されている。名古屋大学医学部ご出身の超秀才である。そして石田先生こそが、筆者(浅野)が初めて本庶研での研究をスタートさせたときに、トランスジェニックマウスの解析を手掛けた経験により、本庶先生から相談役に任命された方であった。

 当時石田先生は、大学院を修了され助手として本庶研の研究の一端を担っておられた。1年前に大学院生として入局していた縣保年先生(現・滋賀医科大学教授)と二人三脚で「胸腺にオける Tリンパ球の選択機構のメカニズム解明」という目標を達成するための実験に取り組んでおられた時であり、まさに最重要なタイミングであった。

 そのような状況で、先生の研究のお手伝いをするでもない筆者(浅野)の相談役として指名されたことは、まさに青天の霹靂であったであろうし、決して歓迎すべき事態ではなかったはずである。

 

3. 胸腺での T リンパ球の選択

 

 生体内に備わった免疫機構には大別して2つのシステムが在る。自然免疫と獲得免疫であり、後者はさらに液性免疫と細胞性免疫の2つの系統に分けられる。それぞれの免疫系の特徴は、

          ① 液性免疫→骨髄由来のB細胞を中心とする。骨髄は bone marrow という。

獲得免疫    ② 細胞性免疫→胸腺由来の細胞を中心とする。胸腺は thymus という。

 これらの免疫系は協働して、体外から侵入する細菌やウイルス等の外敵(非自己)を無毒化し撃退する。しかし、その過程で自分自身(自己)を傷つけてしまうようなことがあってはならない。自己を攻撃する抗体は自己抗体と言い、自己免疫疾患を引き起こすこととなってしまう。従って自己に対して反応するような B 、T リンパ球は排除されなければならないのである。免疫における自己と非自己の識別の要諦は、自己反応性の細胞を排除することにほかならないのである。

 それでは、自己に対して反応する T リンパ球はどのようにして排除されるのであろうか?Tリンパ球は胸腺と呼ばれる器官に由来するリンパ球であり、胸腺を英語で thymus と言うことからその名がついた。T リンパ球も骨髄に存在する幹細胞から発生するが、幹細胞はその後、胸腺に移行し胸腺の中で教育を受ける。これは自己の成分に反応してはならないということ( negative selection ) と、自己と非自己を識別するために、自己であることを認識すること( positive selection ) を教えるものである。

 この2つの教育を受けて初めて自己反応性の T リンパ球は排除され、正常に機能する成熟した T リンパ球ができあがるのである。この過程で自己反応性の T リンパ球は計画的に胸腺内で殺滅されるが、この細胞死の形態が計画的細胞死( programmed cell death ) と呼ばれる方法なのである。

 つまり胸腺という臓器の中で、人間が自ら体内の不必要な T リンパ球を排除するという意味である。

 それではどのような方法で細胞死が起こるのであろうか?そのメカニズムの解明こそが石田先生の掲げられた目標だったのである。

 

 

 

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