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2019年7月26日 (金)

ゲノム編集食品がやってくる ①

 天笠啓祐(ジャーナリスト)さんは、雑誌「世界 7」に次のように報告している。――「今年の夏、ゲノム編集食品が食卓に並ぶ。ゲノム編集技術を「成長戦略」と位置づける政権の前のめりの姿勢のもと、安全性をめぐる議論は圧倒的に不足したままだ。 コピー・ペー:

 

■ あわただしく出された結論

 2018/06/15、安倍政権は政策の大きな柱の1つであるイノベーションを進めるため、「統合イノベーション戦略」を閣議決定した。その戦略を推進するため、同時にゲノム編集をイノベーションの核となる技術のひとつと位置づけ、その推進のために必要な法律などの整備を各省庁に求めた。具体的には、カルタヘナ法、食品衛生法、生命倫理に関する指針などによる規制に関して、年度内に明確化することを求めたのである。

 直後の2018/07/11、環境省が早速動く、中央環境審議会の遺伝子組み換え生物等専門委員会を開催して「カルタヘナ法におけるゲノム編集技術等検討会」の設置を決め、カルタヘナ法での規制に従って遺伝子組み換え生物同様に環境影響評価を行うか否かを議論することになった。その前提として、環境省はゲノム編集技術を3つの段階に分けた。

 ゲノム編集技術は、基本的にDNAを切断して遺伝子を壊す技術である。しかし、切断した個所に新たにDNAを挿入することができる。その場合、遺伝子として働く長いDNAを入れることが通常だが、数塩基だけの短いDNAを入れて確実に遺伝子の働きを壊す操作を行うこともある。

 そこでゲノム編集を、①DNAを切断するだけ、②数塩基を挿入するケース、③遺伝子として働く長い塩基を入れるケース、の3段階に分けた。

 環境省によって示された提案は、①のDNAを切断し遺伝子を壊すだけで、切断個所に何も入れないケースは規制の対象外とする。②と③の場合は規制の対象とする、というものだった。現在、ゲノム編集はDNAを切断するだけのものが殆どであり、この決定は、現在進められているゲノム編集での作物や動物の開発に関しては、大半は規制しない、ということを意味した。

 その後、設置された検討会が2018/08/07、2018/08/20の二度にわたり開催、その方針が了承、2018/08/30、再び専門委員会が開催され、正式に当初の提案が確定した。

 次に、厚労省が動いた。2018/09/19、食品衛生法での方針を検討するため、薬事・食品衛生審議会の新開発食品調査部会・遺伝子組み換え食品等調査会を開き、食品の安全審査を行うか否かの議論を開始、そこでの議論の内容が、2018/12月にまとめられた。

 その報告を受けて同12月に上部機関の新開発食品調査部会での議論が始まった。しかし、同調査部会は12月に二度に開かれるというスケジュールが組まれ、2019/01/17、には報告書案がまとめられるというものだった。その報告書案は、最初に開かれた遺伝子組み換え食品等調査会で出された結論をそのまま踏襲する内容で、環境省のカルタヘナ法での規制よりも、さらに規制を緩やかにした提案だ。

 その提案の中身は、①については勿論、環境省が規制の対象にした②のケースも規制の対象から外したのである。さらには③のケースでも、最終産物に挿入したDNAが残らない、あるいは除去したケースは規制の対象から外すという、ほとんど規制しない内容だった。

 2019/03/21、厚労省は同調査部会をふたたび開催して、パブリックコメントを踏まえ、ゲノム編集食品の安全審査を原則不要にする報告書案について最終の審査を行い、正式に承認された。これにより今夏からゲノム編集食品が安全審査なく、食卓に出回ることになりそうだ。

 このように当初の統合イノベーション戦略が求めたスケジュール通り、2018年度中にすべてが決められ、しかもほとんど規制しない内容でまとめられるという、実に政治的な色彩の濃い形で決着がつけられたのである。

 しかも今回の決定によって、安全審査を原則行なわないことになったのに加えて、届出が任意とされた。事業者が必ず届けるとは限らないため、どのような食品になったかを把握することが困難になった。今後は消費者庁による食品表示問題に焦点は移行する。しかし、届出が任意であればゲノム編集食品を見分けることが出来なくなり、表示の実施も困難となる可能性が高くなった。

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