« Science 免疫チェックポイント阻害剤 オプジーボ開発の出発点 ③ | トップページ | Science 免疫チェックポイント阻害剤 オプジーボ開発の出発点 ⑤ »

2019年7月24日 (水)

Science 免疫チェックポイント阻害剤 オプジーボ開発の出発点 ④

続き:

 

6. PD- 1 のがん治療への応用

 

 PD- 1 の機能を突き止めた前記の研究は、その後の研究の進展に大きく寄与するものとなった。PD- 1 は細胞の表面に発現している分子であるが、これと結合するタンパク質としてPD- 1 ligands (PDLs) が発見され、この分子をある種のがん細胞に過剰に発現させると、本来がん細胞を殺傷するはずの Tリンパ球により殺されなくなることが明らかとなった。

 この実験は2002年の米国雑誌 PNAS に掲載されたが、これが PD- 1 をがん治療薬の標的として利用し得ることを証明した最初の報告であり、新規がん治療薬開発の幕開けだった。

 この研究はまた、多くのがん細胞にPDL が発現していることを明らかにし、がん細胞の細胞膜上に存在する PDL と T リンパ球の細胞膜上の PD- 1 の結合が T リンパ球にマイナスのシグナルを送り、そのがん殺傷能力を低下させることにより、がん細胞自身が免疫による監視機能を逃れているということを明らかにした。この研究報告が端緒となり、新しいコンセプトに基づくがん治療法の開発への道が開かれた。すなわち、PD- 1 に特異的に結合する抗体を薬として作用させて、PD- 1 と PDL の結合を阻害すれば、 T リンパ球ががん細胞を殺滅できるようになるのではないかという着想に至ったのである。

 果たしてオプジーボは臨床応用されるに至り、その驚くべき効果に世界中が注目している。

 PD-1 のクローニングから実に10年以上の歳月が流れていたが、これは世界を驚かせる大発見であり、がんの治療法を根底から見直すチャンスを人類に与えるものとなったのである。オプジーボはすべてのがん症例に有効なわけではない。副作用が問題となる症例もある。

 本庶先生は「オプジーボはまだ生まれたばかりの薬であり、ペニシリンの発見当時の状況と似ている」と述べられている。その応用範囲を広げ、人類にとってより有用な薬となるよう今後もますます基礎研究に基づく改良が続けられるはずである。研究者たちに終わりはないのである。

« Science 免疫チェックポイント阻害剤 オプジーボ開発の出発点 ③ | トップページ | Science 免疫チェックポイント阻害剤 オプジーボ開発の出発点 ⑤ »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事