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2019年7月17日 (水)

Clinical オーラルフレイル●口腔機能低下症を理解する ②

続き:

 

1. オーラルフレイルとは

 

 Frailty とは、加齢に伴い心身の機能が低下した状態で、2014年に日本老年医学会はこれを「フレイル」と呼ぶことを提唱した。フレイルは、健康と要介護状態の中間的な状態で、可逆性と多面性を持つことが特徴。可逆性(reversibility)とは、適切な対応により機能回復が可能であることである。多面性(multidimensional concept) とは、身体的なフレイルだけでなく、社会的なフレイルや精神心理的フレイルの側面を持つことである。

 今回、オーラルフレイルの定義と概念図(図は略)が示されている。

※ オーラルフレイルの定義

  老化に伴う様々な口腔の状態(歯数・口腔衛生・口腔機能等)の変化に、口腔健康への関心の低下や心身の予備能力低下も重なり、口腔の脆弱性が増加し、食べる機能障害へ陥り、さらにはフレイルに影響を与え、心身の機能低下にまで繋がる一連の現象及び過程。

 オーラルフレイルは、4つのレベルに大別され、フレイルへ与える影響度は、そのレベルが進行するにつれ大きくなっていく。また、オーラルフレイルは、フレイルの概念と同様に、可逆性と多面性を持っている。

 オーラルフレイルは、8020運動と同様に、口腔機能の低下を防ぐ運動論として、広く国民に浸透することが望まれる。千葉県柏市在住の高齢者を対象にした Tanaka らの調査は、オーラルフレイルが、身体的フレイルの発症リスクを2.4倍、サルコペニアを2.1倍、要介護認定を2.4倍、総死亡リスクを2.1倍上昇させることを明らかにした。オーラルフレイルの啓発や対策により、口腔機能だけでなく、身体的フレイルや社会的フレイル、精神心理的フレイルにつながることが期待される。

1) 第1レベル「口の健康リテラシーの低下」

 オーラルフレイルの第1レベルは、「口の健康リテラシー(口腔健康管理に対する自己関心度)の低下」の段階である。この段階は、自分自身の口腔の健康状態に対する関心が低下していることが最大の問題点である。口腔健康リテラシーの低下は、 独居や社会的役割の変化伴う社会的孤立の状態(社会的フレイル)や、精神的・心理的状態の変化(精神心理的フレイル)と密接な関係がある。その結果、う蝕や歯周病のリスクが高まることで、残存歯数の減少などを引き起こすと考えられる。

 オーラルフレイルの最初の段階である第1レベルへの対応は、ポピュレーションアプローチが中心である。8020運動やかかりつけ歯科医師を持つよう啓発していくことも重要な取り組みとなる。まずは、すべての国民に自分自身や家族の口腔の健康に関心を持ってもらう。

2) 第2レベル「口のささいなトラブル」

 オーラルフレイルの第2レベルは、「口のささいなトラブル」の段階。滑舌の低下や食べこぼし、わずかなむせが生じるなど、食べる機能や会話などに何らかの変化が見え始めるのがこの段階である。ここでは、症状としては軽微であるため、機能低下を自覚することはほとんどなく、自覚したとしても「齢だから」と深刻には考えないことが多い。しかし、第1レベルの口腔の健康状態への意識低下と相まって、ささいなトラブルを放置することで機能低下が進行する。→多い。

 地域包括ケアシステムでの保健事業や介護予防事業による対応は、この第2レベルに該当する。

3) 第3レベル「口の機能低下」

 オーラルフレイルの第3レブルは「口の機能低下」の段階だ。第3レベルでは、口腔機能のうちの単一の機能の低下にとどまらず、複数の機能が複合的に低下した状態だ。この段階では、個々の機能低下があっても、他の機能による代償作用が働くため、第4レベルで見られるような咀嚼や嚥下といった統合された機能の障害として表出することはほとんどない。また、低下した機能の可逆性が保たれているのも特徴だ。従って、この段階で口腔機能の気付いて対応することが重要である。

 従来から歯科では、口腔機能低下への対応が行われてきた。しかし、それは個々の機能の評価と対応が中心であった。例えば、咀嚼機能が低下した場合には咀嚼障害であり、発音機能に問題が生じた場合は発音障害として扱われてきた。そして、その対応も個々の機能別に行われてきた。

 一方、オーラルフレイルの概念では、複数の機能が複合的に低下した状態も対象としている。そのため、口腔機能を構成する複数の機能の検査・評価をおこない、低下が認められた場合には口腔機能管理によって対応する。検査結果に基づき、社会的、精神心理的背景も考えながら、口腔機能の維持・向上のために総合的に管理計画を立案することになる。

4) 第4レベル「食べる機能の障がい」

 オーラルフレイルの第4レベルは、「食べる機能の障がい」の段階である。口腔機能の低下が進行し、摂食嚥下障害などの、障害の段階に陥った状態である。この段階になると、摂食嚥下障害の専門的な対応が可能な歯科医師や施設で対応が必要となる。摂食嚥下障害の重篤化を防ぐことは、誤嚥や誤嚥性肺炎、窒息等の予防につながり、さらには低栄養、サルコペニアなどの重篤化の防止にもつながると考えられる。

 この段階では、障害に対するリハビリテーションが中心となるが、低下した機能の可逆性が著しく低下するのも特徴だ。そのため、障害の程度に応じた食べる楽しみを提供することも必要となる。

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