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2019年8月20日 (火)

EUとポピュリズムのせめぎあい ④

続き:

 

 ポピュリスト政党が結束を維持できる場合、EU を内から変革するため、その政策決定に影響を及ぼす径路として、欧州議会以外に政府間ルートが存在する。欧州議会ルートとは、EUの政策立案・執行機関であるコミッションの指名、立法採択や予算の承認等で影響力を行使することである。

 ポピュリスト政党の投票行動は、その印象とは裏腹に大企業寄りで、労働者保護や環境保全に関する法案に反対する傾向があると言われている。今回の選挙では、ポピュリスト政党の議席がすべての会派を合計しても過半数に達しないため、このルートによる影響力が限定的で、審議の遅延などにとどまる。

 これに対し、政府間ルートは、加盟国の選挙を通じて単独政権や連立政権を形成することにより、ポピュリスト政治家が首脳または閣僚として、欧州理事会( EU 首脳会議)や閣僚理事会の決定に加わることにより影響力を行使することができる。

 欧州理事会はEUの基本政治方針をコンセンサスで定めるので、ポピュリスト政治家の首脳がその形成を妨げることは可能である。ただし、様々な重要議題がある中で「ピア・プレッシャー」(同僚圧力)が働くため、決定をブロックすることが常に容易であるとは限らない。

 また、閣僚理事会は欧州議会と共同で立法・予算の決定を行うが、原則として「特定多数決」(加盟国数の55%+EU 全人口の65%)に基づくため、ある議案でポピュリスト政治家の閣僚が反対票を投じても成立する可能性が高い。なお、閣僚理事会では特定多数決事項であっても、実際には審議を尽くしてコンセンサスで決定することが慣行化している。

 EU内でポピュリスト政党が加わる政権が増加すれば、それだけ EU の政策決定が影響を受けることになる。現在のところ、ポピュリスト政党が参加する政権を有する加盟国は28ヵ国中7ヵ国である。

 残りの国内ルートは、ポピュリスト政党が野党や閣外協力政党として、加盟国政府のEU関連政策に影響を及ぼす場合である。たとえばデンマークで見られたように、反移民の世論の高まりを受けてポピュリスト政党に対する支持率が上昇したため、選挙を控えて政府が反移民的政策を導入し、それがEUレベルでも同国政府の政策に反映されるようになる場合である。

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