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2019年8月27日 (火)

「快適で安全」な監視社会 ③

続き:

 

公共空間ですすむ監視カメラによる顔認識 <2>

 4つ目は、顔認識技術は他の個人データ取得技術に比べてプライバシー侵害リスクが高いという点である。英国議会の2018年の報告書は、「顔画像は DNA や指紋その他の生体認証技術よりも遥かに顕著な特徴を持ち、顔画像の取得・利用・保持には重大な倫理的問題がある」と指摘しており、その理由として、「顔画像は本人が知ることなく容易に取得され、保持され得るから。また、顔写真データベース(パスポート、運転免許証、拘留者画像)は既に、成人人口の90%をカバーしているからである」としている。

 5つ目は、意思決定者に関する点である。前述の英国議会の報告書には、「顔認識技術のような重要な分野においては、その広範な導入に関する最終的な意思決定は警察ではなく、大臣や議会が行わなければならない」と書かれている。なお、英国では英国議会の提言を受けて、2018年7月に、警察での自動顔認識技術の利用を監督する「監視・諮問委員会」が立ち上げられている。

 米国では、アマゾンが「リコグニション」という自動顔照合システムを地方警察に販売しているが、米国自由人権協会(ACLU)等の市民団体は2018年5月、二つの警察(フロリダ州オーランド、オレゴン州ワシントン郡)がリコグニションをボディカメラと地域監視で用いたことに関して異議申立てを行った。訴えでは、同システムはリアルタイムの市民監視を可能にし、学習用データが白人に偏っているため黒人などのマイノリティに不利に機能するとして、同システムの販売を停止するように要求している。さらに、2018年6月には、アマゾンの有志社員が、リコグニションの捜査機関への販売と移民税関捜査局へのサービス提供中止を求める書簡を同社のベゾスCEOに送っている。

 他方、マイクロソフトは2018年12月、ブラッド・スミス社長兼CLO のブログで、米国政府に対して顔認識技術の法規制を求めるという画期的な提案を行っている。同社は、顔認識技術の乱用されるリスクとして、「顔認識の特定の利用法がバイアスを含み、違法な差別を含む意思決定を生み出すリスク」「顔認識の広範な利用が人々のプライバシーを侵害する可能性」「政府による大規模監視のための顔認識利用が民主主義の自由を損なう可能性」の三つを挙げ、特に三点目のリスクに対して、警察が仮に特定個人の公共空間での継続監視を行うのならば、特定の監視に対する裁判所命令を取得できた場合などに限定すべきとしている。

 このように、近年、海外において公共空間での自動顔照合システムの導入事例が散見されるようになったが、その先駆けとなっている英国においても、未だ社会的なコンセンサスが十分に取られていない状況である。あまり想像したくないが、万が一、日本において公共空間での自動顔照合システムを導入するようなことになった場合には、住民のプライバシーへの影響は甚大であり、大規模イベント時など期間と場所を限定した利用に留めるべきであろう。

 また、プライバシー影響評価(PIA)等を通じて、事前に住民への周知徹底や社会的コンセンサスの獲得を十分に行うべきと著者(小泉)は考える。

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