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2019年8月14日 (水)

Clinical 「超高齢社会を支える義歯治療」 ③

続き:

 

4) 舌下腺部

 下顎義歯吸着の最大の源であり、ここが辺縁封鎖できていないと義歯は浮き上がる。機能時の口腔底の動きは極めて大きいため、「ここに、この形の床縁をもってくれば必ず吸着する」という考え方ではなく、「辺縁封鎖ができる確率を高める」というスタンスで臨むべきである。この部の辺縁封鎖が下顎全部床義歯の維持力の主たるものであり、この部の封鎖がされないと、顎堤が良好なら別だが、開口時に義歯は容易に持ち上がってしまう。

 開口時に持ち上がった状態で閉口から咬合に移行した時、義歯は顎堤粘膜に対して摩擦を伴って押し付けられることになるため、持ち上がりの程度が大きいと必然的に顎堤粘膜にストレスを与え、疼痛、潰瘍の原因となる。したがってこの部の辺縁封鎖を確保したいが、この部の挙動が大きく、一通りの辺縁形態や辺縁の位置ではすべての状態に対して完全に辺縁封鎖が成立するように対応するのは不可能。

 よって辺縁封鎖されている時間ができるだけ長くなるように、あるいは封鎖されている確率が高くなるように、この部の辺縁の厚みや深さを設定する。実際にはコンパウンド等で少し押して採ることになるが、必ず口腔底の反発を指で感じておくべきだ。

 作業模型製作時にも気を付けていただきたい。

 辺縁の外側の立ち上がりを義歯に反映させるために辺縁のトリミングを深く残す。ラボ(技工士)とのコミュニケーションが重要である。

 舌小帯部には気を付けていただきたい。舌小帯部は顎堤が吸収している場合はオトガイ舌筋の付着部であり硬い。その周囲の口腔底は疎な組織なので軟らかいのだが、そのギャップを床縁に反映させるのは厄介である。避けすぎると吸着が弱くなり、攻めすぎると潰瘍を生じさせることになる。ギャップが大きい場合は、調整に数回かかる場合もある。

 また、口腔庭の上下が大きい場合、この部の下顎骨のアンダーカットのため、舌安静時に辺縁封鎖ができないことがある。

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