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2019年8月29日 (木)

「快適で安全」な監視社会 ⑤

続く:

 

途上国における住民登録とID カードの必要性

 続いて、途上国における住民登録や国民ID カードを用いた行政サービス提供について取り上げたい。筆者(小泉)はこれまで中南米~アフリカ迄17カ国の途上国で現地調査を行った。

 途上国においては、日本や欧米といった先進国とは異なり根本的に住民登録が不備があるために、特に地方部の住民が様々な公共サービスをうけられずにいるケースが多い。乳幼児が予防接種を受けていなかったり、就学年齢の子供が義務教育を受けていなかったり、農家が肥料やプロパンガス等の給付を受けられなかったり、身分証明書が無いために銀行口座を開設できなかったり、就職が不利になったり、選挙人名簿が不正確なために公正な選挙が行われなかったり、といった問題が生じている、

 このような問題に対処するためには、子どもが生まれた際の出生登録と、成人した際の身分証明書(国民IDカード)の発行を確実に行うことが極めて有効な対策だ。出生証明書を持ち、公的な身分証明書を持つことによってはじめて、住民は社会や経済活動への参加を果たすことができる。

 このように、個人が「平等」なソーシャルインクルージョンを実現するため、すなわち「公平」に社会保障・医療・教育などの公共サービスを受けたり、選挙権を行使したり、就職したり、銀行口座を開設するためには、そもそも住民登録や国民IDカードの取得が必須である。さらに、出生登録台帳に不備がある多くの途上国においては、成人時の国民IDカード発行に当たっての二重登録(同じ人が二回以上登録したり二人以上の名義で登録すること)を防ぐために、本人の指紋や顔写真といった生体情報を活用することが効率的な方法となる。

 しかしここで議論になるのは、国民IDカードの発行ために指紋を採取するほとんどの国が十指すべての指紋を採取するということである。住民の指紋は二重登録防止の目的のほか、指紋を用いたオンラインでの個人認証サービス(たとえば銀行口座開設時の本人確認)に使われることもある。しかし、これらの目的であれば十指の指紋すべてを取る必要はなく、より少ない数で十分なはずである。にもかかわらず、住民から採取した指紋のデータベースを警察と共有したり、警察にアクセス権を与えている国も多いのだ。こうした国々では、犯罪捜査においても利用できるように、住民から十指の指紋を取っているのである。

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