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2019年8月21日 (水)

EUとポピュリズムのせめぎあい ⑤

続き:

 

 欧州議会選挙後のEU はどこへ向かうのだろうか。2017/03/01、にコミッションが公表した「欧州将来白書」では5つのシナリオが示されている。それは、第1にEU の権限の範囲と強度を現状のまま維持することである。第2に「アラカルト欧州」であり、EU レベルの協力を単一市場の深化にとどめることである。すなわち、EU の権限の範囲を単一市場のみに縮小し、それ以外の権限を加盟国に返還することを意味する。第3のシナリオは「2速度式欧州」である。意思と能力を有する加盟国が特定分野先行して統合を進める一方、他の加盟国も後から参加することが可能である。第4のシナリオは「準アラカルト欧州」であり、EU の権限を一部縮小して加盟国に返還する代わりに、残りの分野ではEU の権限を強化することを意味する。第5のシナリオは、EU がすべての政策分野で権限を一層強化して共通の課題に取り組むことである。

 以上のシナリオは、政策分野に応じて組み合わせが可能。ポピュリスト政党が選好するのは明らかに「アラカルト欧州」である。それには国境管理や移民・難民政策の権限をEU から取り戻すことが含まれる。しかし、ハンガリーとポーランドの事例を参照するならば、ポピュリスト政党は自国のアイデンティティを唱えて多文化主義を否定し、移民・難民などの「他者」を排除する。

 また、多数派支配を維持するために「法の支配」を軽視し、司法権の独立やメディアの中立性を否定することにより、権威主義化するリスクを伴う。EU では、それは人権、法の支配などに対する重大な違反を対象とする権利停止手続きの対象となる。また、6月24日EU 司法裁判所は、ポーランドのポピュリスト政権が最高裁判所判事の定年を恣意的に引き下げて現職判事を排除したことがEU 法上の司法権独立に反するという判決を下している。

 他方で、金融政策を補完する追加的な政策手段としてユーロ圏共通予算を導入することなどの課題については2速度式欧州が必要とされる。一方、気候変動・環境問題に関しては国境を越える課題としてEU が権限を強化して主導的役割を果たすことが期待される分野である。環境保護派の「緑の党・欧州自由連合」をはじめとする親EU 派政党の協力が期待される。

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