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2019年9月 8日 (日)

感染症と人間(5)―②

続き:

 

 その微生物の生息域は、上空5000メートル~地下1000キロメートル以上に及ぶ。極端な高温や高圧、酸性度の高い環境、あるいは有機溶媒の中にさえ、その存在は知られる。あらゆる水圏、土壌に生息する。2010年、地球惑星研究者らは、北米大陸西海岸沖合海底の噴出口からの湧水に大量の微生物が存在すると報告した。これらの微生物は塩酸塩を代謝していた。

 微生物の総計重量は、地球上のすべての動植物の総重量より重いという計算もある。

 世界初の「海洋生物の国勢調査」の結果が発表されたのは2010年のことだった。結果は、興味深いものであった。例えば、海洋には、100万種以上の生物が生息していると考えられていたが、未発見の生物もそれと同じくらいの数存在することが推定された。また、海洋中の微生物量これまで考えられていたよりはるかに多いことも示唆された。

 海洋生物の約90%は微生物が占める。総個体数は、10の30乗にも及ぶ。すなわち、100億×100億×100億個の微生物が海洋を住処にしているというのである。総重量はアフリカゾウの2400億頭分、アフリカゾウの平均体重が5トン(5000キログラム)だとすれば、その重量は1兆2000億トン、1京2000兆キログラムにも達する。

 因みにアフリカゾウは地球上で最も重い陸上生物である。海洋まで入れれば、シロナガスクジラが最重量で、100トンに達する。

 もう少し簡単な計算を続けてみる。

 ヒトの平均体重を60キロ。現在の世界人口を70億人と仮定すれば、地球上のヒトの総重量は4.2億トンとなる。それと海洋微生物の重量を比較すれば、海洋微生物だけで、現生人類の3000倍もの重さを持つ計算になる。

 

 地球が、微生物の惑星であることを示す別の証拠もある。

 同じ細菌の属する大腸菌とクロストリジウム属菌の遺伝子から推定される系統学的距離は、トウモロコシとヒトの系統学的距離より遠いという。系統学的距離とは、遺伝子の相同性に基づく距離のことで、分子時計の概念をそこに外挿すれば、それは二つの生物が分岐した進化時間に近似する。すなわち、トウモロコシとヒトは、大腸菌とクロストリジウム属菌よりも近縁(近い親戚)だということになる。

 真正細菌、古細菌、そして藻類、原生動物、菌類、粘菌といった真核生物の一部からなる微生物世界は、それ以外の生物世界を、数においても、量においても凌駕している。まさにこの地球は「微生物の惑星」だったのである。

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