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2019年9月29日 (日)

感染症と人間(6)―①

「人間と科学」第304回 山本太郎(長崎大学熱帯医学研究所環境医学部門国際保健学分野教授)さんの研究文を乗せる。コピー・ぺー:

 

世界の腸内細菌を探しに

 

 乾燥した大地、澄み切った青空。遠くに万年雪を抱くダウラギリの山並み。ネパールとチベットの国境に位置するムスタン。ムスタンとは、チベット語で「肥沃な平原」を意味する。南北約80km、東西約64km。標高は3,500mを超え、古くはインド平原を結ぶ回廊として知られていた。人口は約10,000人。住民はチベット人でチベット語を話し、チベット仏教を信仰する。長く外国人の立ち入りが禁止され、「禁断の王国」とも呼ばれた。

 1951年の中国軍によるチベット侵攻後は、「チベット外のチベット」とも呼ばれ、古きチベットの伝統を残す。2008年、ネパール政府は藩王制を廃止した。それにより、ムスタン国王は退位し、王国は終焉を迎えた。

 2017年夏、わたし(山本)は、そのムスタンの地に立っていた。わたしたちは「ぷー・プロジェクト」と呼ぶプロジェクトを立ち上げた。「ぷー」とは、英語の幼児語で「ウンチくん」。日本語で言えば「ウンチくん」プロジェクトといった意味になる。プロジェクトは、言葉の通り、「うんち=大便」を集めようというものであった。多様な環境下に暮らす人々から「大便」を集め、その中に存在する腸内細菌叢を、できる限りあるがままのすがたで保存。同時に、それが環境適応能力や健康に与える影響を評価しようという計画である。約一週間にわたる現地でのフィールド調査によって多くの収穫を得た。

 2018年には、北部アフリカのスーダンで遊牧民を対象としたフィールド調査を行った。青ナイル川と白ナイル川が合流する土地にあるスーダンは、古くからエジプト文明の影響をうけつつ独自のヌビア文明を育んだ。同時に大河流域の外には広大な砂漠が広がり、多くの遊牧民が、独自の食生活の下に暮らす地でもある。

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