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2019年9月21日 (土)

Science デンチャープラーク微生物叢の群衆解析と義歯ケア ⑦

続き:

 

8. 義歯の清掃とデンチャープラーク微生物叢

 

 デンチャープラークの構造は、唾液由来のペリクル層上に常在菌バイオフィルムが形成されたもので、経時的に成熟し、口腔粘膜に炎症を惹起したり肺炎の原因にもなる。この微生物集団を除去することが義歯清掃・義歯ケアの主目的であり、①機械的方法(ブラッシング、超音波洗浄)、②薬剤応用(過酸化物系殺菌剤、抗真菌薬、プロテアーゼやβ グルカン分解酵素等の酵素類)に分類できる(ここでは詳細には触れない)。

 近年の研究は、機械的方法と薬剤応用を併用することが単独よりも効果的であることを、微生物学的な見地から示している。

 Nishi らは、過酸化物系洗浄液に義歯を浸漬し超音波処理すると表面に生息する微生物量が効果的に減少したことから、義歯洗浄を自力で行うことが困難な高齢者にこの方法を推奨している。

 一方 Duyck らは、総義歯人工歯に形成されたプラーク中の口腔細菌20菌種と Candida albicans を対象に、2種類の機械的清掃法(ブラッシングまたは超音波洗浄液)と夜間の保存条件(過酸化物系義歯洗浄液または真水への浸漬)を組み合わせた4条件での義歯清掃効果を比較している。その結果、薬液浸漬の有無で総細菌数減少効果に有意差が認められたものの、Candida の定着阻止効果について、その差は認められず、またブラッシングと超音波洗浄間では菌数減少効果に有意差がなく、後者は前者の代替法として利用できると結論している。

 同様にBaba らは、義歯用ブラシを用いた毎食後の機械的清掃に就寝中の洗浄液浸漬を組み合わせると、義歯表面の生息微生物量と C. albicans 細胞数を減らす効果がブラッシング単独よりも明らかに高いことを示したうえで、その違いを患者が必ずしも実感していないことを示唆するデータも報告しており、デンチャープラークの生物学的理解を基礎にした義歯ケアの重要性について、さらなる啓発活動の必要性を感じさせる。

 さらに、義歯洗浄剤の使用頻度とデンチャープラーク微生物叢との関連について調べた研究もある。Ramage らは、毎日の義歯ブラッシングに加えて、過酸化物系の義歯洗浄タブレットを毎日1週間継続使用した場合と週に1回のみ使用した場合とでデンチャープラーク微生物の性状に違いが表れるかを比較検討した。

 総菌数の減少度に関しては毎日薬液浸漬を行った方が週1回よりも効果的であることを示した一方で、細菌構成に関しては、検討した7菌種のうち Veillonella dispar と レンサ球菌属が終始優勢であり、一時的に Actinomyces naeslundii が増加するものの、最終的には薬剤処理の有無や頻度によって菌構成に大きな変動は起きないとする in vivo のデータを示している。

 以上の知見を総合すると、デンチャープラーク微生物をコントロールする観点から義歯の標準的な清掃洗浄方法として推奨されるのは、義歯用ブラシによる機械的清掃と過酸化物系薬液への浸漬を毎日行うことになる。そして義歯使用者自身で清掃困難な場合や、ティッシュコンディショナーや軟性裏層材等のブラッシングに弱い材料が用いられた義歯の場合は、超音波洗浄機の利用が推奨される。

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